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ダグラスの社会信用論(連載5) [Basic income]

ベーシックインカムを支給すべき社会的根拠も、やはり強力なものであった。人々にはある種の所得が基本的な権利として必要なのである。彼らは生活必需品に直接触れることのできる権利がある。ベーシックインカムと失業手当を完全に区別する二つの根本的要素がある。第一に、ベーシックインカムはすべての人々に、他の所得があろうとなかろうと、支給されるものである。第二に、それは失業手当のように他人が稼いだ所得を再分配するのではない。したがって、すべての人々のためのベーシックインカム―人々が労働を通じて稼いだ賃金を補充し、それを土台に生活を支えることのできる所得―は、すべての人々の共通した財政的土台を提供する。仕事を見つけたといってベーシックインカムが撤回されるのではないために、ベーシックインカムは建設的な方式で失業状態を支援することができる。それはまた、就職中である人々にも支援を与えるであろう。なぜなら、もし彼らの仕事が脅威を受けたり雇用主が彼らを不当に搾取しようとする時、ベーシックインカムは彼らが頼ることのできる予備金になることができるためである。そうした意味で、ベーシックインカムは経済構造と雇用主との関連で、労働者の地位を完全に変えるであろう。人々はこれ以上財政的に脆弱な境遇に置かれていないであろうからである。
ダグラスはまた、人間労働が機械またはテクノロジーによって代替されてきた状況を、ベーシックインカムが反映するであろうという点を指摘した。ベーシックインカムはテクノロジーの発展による恩恵をすべての人が享受できるようにするであろうからである。テクノロジーの発展がなされるのは、ダグラスが命名した「文化的遺産」のためである。このテクノロジーの発展という現実を真に反映して、ベーシックインカムは強制された労働を減らすであろう。ベーシックインカムはまた、人々が生産者でなくても消費者としては必ず必要であるという事実を確認させてくれるであろう。そうして進歩の結果が失業者に所得の喪失という災難を抱かせるのでなく、その恩恵を分けられるようにする一つのフィードバックメカニズムとして、ベーシックインカムが役割を果たすことになるであろう。そして最後に、ベーシックインカムは個々人に支給されるため、肉体労働を効果的に支援することができるようになるであろう。それで、さらに労働集約的な仕事が高度に機械化された事業と競争することを可能にしてくれるであろう。結局、ベーシックインカムは消費者が望む商品の質を保証するだけでなく、人々が望む労働方式も保証する手段になることができるであろう。 ダグラスが提唱したことは、静的で非妥協的な改革でなく、全く新たな社会的力学の創造であった。彼はベーシックインカム制度を通じて一つの新たな選択が出現するであろうと予見した。その選択は、人々が経済から本当に何を望み、どんな方式で仕事をしようとするのかを正しく反映することができるであろう。従来の賃金依存方式と比較すると、完全に新たな力の均衡がそこに関与することになるであろう。その均衡は、経済が提供することのできる選択のすべての中から人々に選択の自由を許容するであろう。こうした均衡は、普通の賃金所得者だけでなく、事業家と雇用主にも影響を及ぼすであろう。なぜなら、彼らは自身の商品に対する適当な販路をよりたやすく発見することができるであろうからであり、したがって競争が熾烈な、強要された成長に絶えず縛られなければならない必要がないであろうからである。こうした状況は、完全雇用と成長を盲目的に追求することよりも、はるかに合理的だ。実際に、完全雇用と賃金依存という政策は、これに比較すれば非常に粗雑で残忍なものである。
ダグラスはベーシックインカムに歴史的次元を与えて、その脈絡からもそれを正当化した。人々は土地から遊離し、したがって自らの食糧を栽培する機会から断絶されることによって、すべての経済的独立性を失った。こうした状況で、ほとんど全面的に賃金に依存して生きざるをえなくなった生存条件が、ベーシックインカムによって緩和されうるであろう。こうした意味で、ベーシックインカムは数世紀間、広範囲な貧困を誘発し、賃金依存階級に対する搾取を許容してきた根源的な社会的・経済的不均衡に対応するものである。ダグラスの提案は数世紀に渡り次第に加速化する経済成長の果てに、いくらか民主的な経済発展が始まり、賃金奴隷が終息して、すべての人々がある程度の経済的独立性を回復することが可能であるということを示すシグナルであった。ここで提案された民主主義は、すべての点で政治的民主主義と同じくらい重要なものである。ダグラスはそれを「経済的民主主義」と定義した。
(続く)
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