SSブログ

国家とは支配の道具であることの再確認 [Post capitalism]

物事の本質を捉えようとする際に必要なことのひとつは、その歴史を知り考えることだ。
例えば、原発の歴史をひもとけば、「原子力の平和利用」といいつつ、元々大量殺人兵器として開発された核兵器のさらなる開発・保持のために、アメリカをはじめとした核保有国がその隠れ蓑に利用してきたものであることが分かる。したがって、そのようなものが「クリーンなエネルギー」や「経済的なエネルギー」であるわけがないのである。
また、精神医療の歴史をひもとけば、優性思想に基づいて社会防衛的な見地から、「社会に役立たない人間」を強制隔離・強制収容してきた歴史を見ることができる。そうした歴史を知れば、現在の精神医療の主流をなしている薬物療法も、患者の病を治癒することを目的とするものでなく、かつての目に見える鎖と檻に代えて患者を一生薬という鎖と檻につなぎ止める手段であることが理解できる。
では、国家とは何か? それは私たちが義務教育の歴史の時間に学んだように、農耕社会が発展し、貧富の差が生じることにより、一部の富める者たちが自身の富と財を守るために「発明」した支配の道具であることは、明白だ。
資本主義社会における国家は、民主主義を建前として「三権分立」の権力によって国民を支配する。したがって、立法も行政も、そして司法も、つまるところ一部の支配者(=資本家階級)が「99パーセント」の人々を支配する道具にすぎない。
もちろん“道具も使いよう”なので、民主主義という建前を利用して、99パーセントの人々が積極的に権力機関、とりわけ立法府たる国会に関わりを持ち、政権に参画することによって、1パーセントの人間が、99パーセントの人々にとっても有益な政策を実行することが自らの支配に有利であると判断することはあり得る。このように、資本主義国家でもっとも民主主義のシステムが、支配される側にとっても有利な形で機能してきた国家形態は、北欧に代表される福祉国家であろう。
欧米諸国に後れて資本主義国家の仲間入りをした日本は、その当初から民主主義という建前さえ前面に掲げることがなかったし、敗戦後の再建期においても、戦勝国(=アメリカ)から強制され、いやいや表看板にそれを掲げたに過ぎない。したがって、この70年近く、その民主主義の建前は99パーセントの人々の利益になるように機能することは欧米諸国と比べてきわめて少なく、支配者らは「本音と建前」を常におおっぴらに使い分けてきたし、99パーセントの人々もそれが当然と受け止めてきた。かくて、国会には政治家ならぬ「政治屋」ばかりが跋扈し、政府は財界の顔色ばかりうかがい、お役所は地方末端までいかに住民を効率的に支配するかばかりを追求し、実質的に中央の立法・行政を取り仕切ってきたのは官僚機構であった。また、司法の独立も名ばかりで、立法・行政の利害に真っ向から反する判決は、常にエピソードとして語られるに過ぎなかった。
20世紀に当時の被支配階級=労働者の解放を掲げて登場した社会主義国家も、国家の本質を明瞭に分析していたにも関わらず、資本家に対する「プロレタリアート独裁」の必要性を説くことによって、自ら国家権力の陥穽に囚われていった。実際には99パーセントである労働者や農民が権力を手にすることはなく、共産主義思想で武装したエリートテクノクラートが社会主義の看板を掲げた資本主義国家を再建したに過ぎない。
では、99パーセントの人々が国家権力を手にすることは可能か? 答えは不可能である。国家が国家である限り、それは少数の支配者が自らの富や財を守るために多数の人々を暴力的または非暴力的・民主的等あらゆる手段を使って支配を貫徹するという本質が変わることはないからである。
しかし、資本主義はその終局段階で、すべての国民が飢えることのない十分な富を生み出すようになり、一方、ITの発達が99パーセントの人々に支配イデオロギーの洗脳から覚醒し、支配システムから離脱する手段を与えた。認知資本主義という言葉は本質的に形容矛盾だ。資本主義はモノの生産、それもたえず成長を続ける生産活動を本質とし、資本主義が成長を止めた時、それは崩壊する。
また、グローバリゼーションは国家の「超国家化」をもたらしたが、それは半面で「脱国家化」を促進する役割を果たす。
その時こそ、99パーセントの人々が「国家」という呪縛から真に解放される時であろう。なぜなら、精神的に自立した市民は何ものからの支配も必要としないであろうし、何ものかに従属することもなく「食べていける」手段を身につけているだろうから。そうした自立した市民は、支配という縦のシステムでなく、ネットワークという横のシステムによって社会を構成することを可能にするだろう。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。