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福島の放射能汚染そのままで…東京オリンピック聖火リレーを?(ハンギョレ) [No Nukes]

聖火出発地の放射線量測定結果
福島原発事故以前の1千倍
今年の台風で除染作業が水の泡
「日本政府汚染実態過小発表」

日本政府が提示した1人当たり許容基準
原発労働者被曝制限値と同じ
「がんに安全な放射線値はない」

汚染地図・疫学調査情報すべて不確か
平和なオリンピックを行うには透明な情報公開を

国際環境NGOグリーンピースは4日、東京オリンピック聖火リレー出発地に指定されたJヴィレッジで高濃度放射線量が測定されたと発表した。グリーンピースが10月末にこの地域の放射線量を調査した結果、Jヴィレッジの駐車場で福島原発事故前の1千倍を越える最高71μSv/hの放射線量が検出された。ここは福島第2原発から20km離れた地点で、2011年3月の東日本大震災の時には福島原発事故の対応拠点として使用された。日本政府は来年3月26日にJヴィレッジ近隣から聖火リレーが出発し、福島県全域を回ると発表している。グリーンピースソウル事務所気候変動活動家のチャン・マリは、先月28日に韓国国会で開かれた「東京オリンピックと放射能リスク」セミナーで、「最近、福島の現場を訪れて、福島県の面積の70%を占める山地が放射能汚染の貯蔵庫であるという事実と、今年夏の台風19号がこの地域を再汚染したことを確認した。オリンピックの2種目が開かれる予定の福島県に集中豪雨や台風が接近したら、果たして平和なオリンピックが可能だろうかという疑問が生じた」と述べた。
福島地域の除染作業が円滑に行われたという日本政府の発表とは異なり、東京の北の地域は相変わらず放射能被害が発生しているという指摘が相次いでいる。オーストラリア・メルボルン大学のティルマン・ラフ教授は、「今年5月中旬、福島県飯舘村の除染敷地のモニタリング測定所では0.25μSv/hが測定された一方、測定所の外では0.3~0.4μSv/hが検出された。さらに子どもたちが遊んでいる運動場では2.5~2.6μSv/hが測定された。日本政府が汚染の実態を過小発表している」と指摘した。ラフ教授は1985年にノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議」と2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」に所属し、世界保健機関(WHO)諮問委員を務めている。飯舘村はラオスのオリンピックホストタウンである。
福島県住民である加藤凜は国会のセミナーで、「山地は除染が不可能であり土壌汚染が深刻で、キノコや山菜、野生のイノシシなどで高濃度放射線量が測定されている。今年9月5日にはキノコ類の出荷が制限された」と証言した。福島原発事故が起きたところから60km離れた福島市で生活していた凜は、原発事故の後、お腹が痛くないのに下痢をし、娘がずっと鼻血を出したため、避難地域でないにもかかわらず大阪に引っ越した。彼女は「今年2月に以前住んでいた家を訪ねてみると、高濃度土壌を除染して集めたフレコンバッグが山のように積まれていて、放射線量が急上昇した。昨年の福島県放射能汚染地図を見ると、福島原発から遠く離れているこちらの濃度が原発付近と同様に高線量だった」と述べた。

フレスコバッグ.png

日本政府が1年間に1人当たり被曝許容値を20mSvと示しており、それ以下の濃度ならば何の問題もないかのように許容していることに対しても、専門家らは批判の声を高めている。チュ・ヨンス翰林大学医学部教授は、「国際的に報告された研究結果は、いくら低い放射線量でも、被曝すれば安全でないことを示している。放射線とがん発生の間に閾値(一定水準以上なら発病する臨界値で、逆にそれ以下ならば安全という数値)はないというのが通説」と話す。韓国は原発従事者が5年間累積100mSv被曝しないようにしなければなければならないと規定している。日本政府が提示した20mSvは原発労働者の被曝制限数値であるわけだ。
閾値に関連する最新の報告書は、2018年8月、医学ジャーナル「ランセット」に掲載された論文で、アメリカ・イギリス・日本・フランス・スウェーデン・イスラエルの6ヶ国で9つのコホート(同一集団追跡調査)研究データを総合して、児童・青少年期に年間100mSv以下の低線量放射線に被曝した時のがん発病傾向を分析したものである。1915~2004年の26万2573人に対する分析で、平均約20年間観察し、骨髄に被曝した放射線量は平均累積19.6mSvであった。そのうち154人は急性・慢性骨髄性悪性腫瘍に、40人は急性リンパ性白血病にかかり、221人はその他の白血病(慢性リンパ性白血病等)にかかった。チュ教授は「論文は最も低い5mSvに比べて5~100mSvまでが3倍程度危険であることを示している。論文の結論は電離放射線の安全な閾値はないということだ」と説明した。
キム・イクチュン反核医師会運営委員(元原子力安全委員会委員・元東国大学教授)は、「東京オリンピックに行けばどれくらい放射線に被曝するのか、日本国民は一日どれくらい被曝しているのかを知っていることが最も重要だ。しかし、日本政府が公表する汚染地図は福島近辺だけ表示されていて、疫学調査情報も不十分だ」と指摘する。現在、日本では「みんなのデータ」という市民団体が、市民が測定した放射線量結果を集めて全国汚染地図を作っているのが実情だ
キム運営委員は、「日本政府が唯一公表している疫学資料が福島の子どもの甲状腺がんであるが、30万人中218人と公表しただけで、比較対象は明らかにしていない。アメリカ人全体を対象にした結果値(年間100万人当たり1人)に比較すると70倍、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の資料(100万人当たり3人)と比較しても23倍に達する」と言う。彼は「停留睾丸(胎児の睾丸がお腹の中で作られて降りてこないまま生まれた状態)が13.4%増加し、死産率が2012年に12.9%増加した後、まだ原状回復されていない点等に関する精密な疫学調査が必要だ。日本政府が東京オリンピックを平和のオリンピックとして行うには情報公開から透明にしなければならない」と強調した。
2019.12.9(イ・グニョン記者)

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小児喘息、鼻血、もやしっ子、第五福竜丸事件 [No Nukes]

僕は両親とも40を過ぎてから産まれた子で、生まれたときは丸々と太っていて、3歳頃までは風邪ひとつひかない健康優良児だったという。ところが、父親の仕事の関係で4歳になる頃に隣町に引っ越すと小児喘息を発症し、そればかりかすぐ風邪をひいて熱を出すしで、翌年1年保育で通った幼稚園は半分以上欠席した。小さい頃、当時流行していた歌謡曲を大人たちの前で歌って大喝采を浴びていたひょうきんな性格も、この頃にはすっかり内向的になってしまい、幼稚園では誰とも話をせず、いつも園庭にぽつんと突っ立っていた記憶しかない。
家族は、僕が小児喘息になったのは、引っ越し先の空気が合わなかったからだろうと言い、僕が熱を出すと年老いた母がすぐに医者に駆け込んだ。年取ってからできた子どもは病弱になるーいつかどこかでそんなことを聞いた記憶があり、僕もそういうものだとずっと信じ込んできた。
父は僕が小学校に上がる年に、退職金を前借りして湘南地方に家を建て引っ越した。温暖な気候が僕の喘息にもいい影響を与えるだろうという判断もあったようだ。そのせいかどうか、小学校3年生頃までには、僕の喘息もほとんど治った。
しかし、僕はその頃、背だけは高いひょろひょろの、見るからにひ弱な少年に育っていた。もやしっ子ー当時、僕のような子どもはそう呼ばれた。何でも、核家族化や「鍵っ子」の増加が、外で泥んこになって遊ぶ子どもを減らし、そういう生活環境の変化がもやしっ子を増やしているというようなことが言われていた。

そして、僕はその頃の体型そのままに大人になり、子どもの頃よりずっと丈夫になったが、スタミナ不足で無理の利かない体は、例えば徹夜すると次の日は昼間労働するのは無理、数時間でも仮眠しないと体がもたなかった。
20代後半に、僕はMという親友ができた。Mは僕より6歳年上で鍼灸師の仕事をしていたが、育った環境が全然違うにもかかわらず、不思議と馬が合った。彼は小柄で痩せていて、やはりあまり丈夫な体をしていなかった。そして、僕と同様、両親が40を過ぎてからできた子どもだった。
彼も例の年取ってからできた子どもは病弱になるという俗説を信じていたので、僕のその考えは信念に誓いものになった。


1963年8月5日、米ソ英3カ国は部分的核実験禁止条約に調印し、以降地下核実験のみ行うようになったが、仏中はこれに参加しなかった。

2011年3月11日に起こった東京電力福島第1原子力発電所の爆発による放射能事故以来、僕はたくさんの本を読んで原発や放射能、そして被曝のことを勉強した。そしてそうするうちに、僕の心の中に、ひとつの疑念が芽生えた。もしかして僕の小児喘息やひ弱な体は、両親が40過ぎにできたせいではなく、放射能のせいだったのではないのか?
僕が生まれるつい2ヶ月ほど前に、アメリカはビキニ環礁で水爆実験を行い、日本の漁船・第五福竜丸が被爆した。それだけでなく、50年代から60年代にかけて、米ソ両超大国を中心に世界中で大気中の核実験が行われ、太平洋はその一大実験場と化していた。これら核実験で、世界中で2千万人もの人が過剰に死んだとの統計資料もある。
僕が小さい頃、雨が降ると母親から必ず傘を差し、濡れないよう気をつけるように言われた。被曝マグロの話を聞いた記憶もある。当時は肉はご馳走で、月に2、3回も食べられればいい方、普段は魚中心の食生活だった。僕のうちは上は大学生から小学生の僕まで4人の子どもが学齢期で、母は倹約に余念がなかった。それでもたまに、マグロの刺身のぶつ切りに山芋のとろろかけが食卓に上ったが、あれなんか実は被曝マグロを安売りしているのを、そうと知らずに母が買ってきたものかも知れない。それだけではない、遠洋だけでなく、日本近海も相当程度汚染されていたはずだから、それらの魚介類を毎日のように食べていた僕らは、きっと少なからず内部被曝していたはずだ。兄姉は皆僕より10歳以上年上だったから、放射能の影響をいちばん受けたのが僕だったのは間違いない。
そんなふうに考えると、思い出すのは、鼻血のことだ。僕は少年期にアレルギー性鼻炎にかかり、よく鼻をかんだり鼻をほじったりしていたので、そのせいでよく鼻血が出るのだろうと思っていた。しかし、中学・高校生の頃、朝起きると枕にべっとりと血糊がこびりついていることがよくあった。今考えると、どう考えても普通じゃなかった。当時は鼻血の出やすい年頃なのだろうと誰もあまり気にしなかったが、自分の子どもは、成人するまでに鼻血を出したことはほとんどなかった。
また、もやしっ子だって、僕らの時代は僕のように家でひとり遊ぶことの多い子でさえ、友だちと日が暮れるまで外を走り回っていた記憶がたくさんあるが、その後、ファミコンなどゲーム機が登場すると、子どもたちがそれこそ外で遊ばず、家でテレビの前に釘付けになった。なのにもやしっ子などという言葉は流行しなかったし、僕みたいなひょろ長い子どもが増えたわけでもない。
**********

それでも僕は、前述したように、成人後はそれなりに体も丈夫になり、大病もせずこの年まで生きてこられた。たとえ放射能による被曝の影響があったにしろ、子どもの成長力と生命力がそれを上回ったということだろう。
心配なのは、これからの子どもたちだ。福島の子どもたちだけじゃない。内部被曝のリスクは日本中の子どもたちが抱えている。小児喘息や鼻血やもやしっ子程度のことで済めばいいが、政府が今のように放射能被害を隠蔽し、食品汚染を「風評被害」と否定するような棄民政策をとり続ける限り、日本もウクライナやベラルーシの子どもたちの悲劇が避けられないだろう。
大人が現実から目を背け、無関心を装い、その結果、がんや白血病やあらゆる病気を招くのはある意味自業自得だ。しかし、子どもたちには何の罪もない。そして、子どもたちを守れるのは大人たち、とりわけ子どもの親以外にいないのだ。

南海トラフ巨大地震発生・島岡原発核爆発!ー原発の是非、もう一度考えて! [No Nukes]

熊本地震の犠牲者の方々にお悔やみ申し上げます。
被災者の方々にお見舞い申し上げます。
百年ぶりに熊本地方を襲った地震に、阪神淡路大震災以来、地震・火山の活動期に入った日本列島で、震度7の地震はいつでも、どこでも起こりうることを改めて認識しています。今回の震源は日本列島を東西に走る中央構造線の西端に位置しますが、大分県を海を渡って東に進む愛媛県にはこの断層帯の間近に、次の再稼働が予想される四国電力伊方原発があり、一方、今回の震源である布田川断層帯・日奈久断層帯に続く南西の出水断層帯の目と鼻の先には、今現在日本で唯一稼働中の川内原発があります。活断層は過去に地震を起こした跡ですが、過去にはM7クラスの地震が発生した後に、初めて活断層が確認された例も少なくないのです。原子力規制委員会の原発再稼働の審査で活断層の認定が問題になりますが、たとえただの断層さえ確認されていない場所でも、近くを震源とする地震が発生したとき、原子炉直下を断層が走ってもおかしくないということです。その時、原子炉はどうなるのでしょうか?
現在稼働中の川内原発1・2号機はともに30年を超える老朽原発ですが、中性子を浴び続ける原子炉圧力容器は30年を超えると劣化が進み、脆性破壊が起きやすくなるといいます。直下に地震による強烈な力が加わったとき、最悪の場合原子炉が破壊され即発臨界ーつまり人類がかつて経験したことのない最悪の核惨事を招くことがないとは言い切れません。そうでなくとも、原子炉を取り囲む複雑な配管がすべて無事であるとはとうてい考えられません。電源喪失によるメルトダウンは避けられないのではないでしょうか?
14日晩の地震のニュースを見て、5年前の悪夢が蘇った人も少なくないでしょう。そして、原発は大丈夫なのかと心配になった人も多いのではないでしょうか?
どうかこれを機に、国民ひとり一人が、もう一度、この地震・火山大国日本で原発を続けることの意味を、自分の胸の内に問いかけてほしいと思うのです。






3・11のユートピアーもし最善の策をとっていたら… [No Nukes]

3・11の地震と津波が不可避で、原発事故も避けられなかったのだとしても、もし政府と東電、マスコミが、最初から違った態度をとっていたら、5年後の今、私たちは全く別の世界を生きていただろう。
全電源を喪失し、1~3号機のメルトダウンが避けられないと分かったとき、政府は住民・国民のパニックや混乱を恐れるのではなく、何よりも国民の生命を第1に考えてて行動していたならば、「直ちに影響はない」などといった言葉で国民を欺くことなく、速やかに5キロ圏、10キロ圏、20キロ圏…と住民に避難指示を下すべきだっただろう。原子炉の状態が東電の手にあまり、消防、自衛隊の手にもに負えないと判明したら、米軍はじめ他国の支援を仰いででも鎮圧に全力を尽くすべきだった。
マスコミは「安全神話」が崩壊した時点で、過去の原発報道姿勢と決別し、国の原子力政策に批判的であった学者、専門家らをスタジオに招き、国民向けに正しい放射能の知識と対処の仕方を説明してもらうべきだった。
福島県当局は、県の存続は二の次に、県民の命を第1に考えて対策を立てるべきだった。原発周辺自治体の住民は、双葉町のように近隣県に受け入れ自治体を求めるべきだった。
不完全ではあれ、SPEEDIの資料が明らかになった時点で、速やかに北西方向への避難中止をあらゆる手段を用いて回避措置していれば、無駄な被曝がどれだけ避けられたことだろう。ヨウ素剤が足りなければ、せめて子どもたちに優先的に配布して飲ませるべきだった。そうすれば、今まで、そしてこれからも、甲状腺がんに罹る子どもの数をどれだけ減らすことができただろうか…
国は早い時期に、少なくとも浜通り、中通りの全住民に避難指示を出すべきだった。また、15日、21日に関東一円を放射性プルームが襲ったとき、住民に適切な屋内退避指示を出し、学校はもちろん、会社や役所にも原則休業を命じ、屋内での正しい放射線防御方法を伝えていれば、何千万という人々の被曝が回避されただろう。また、2度の汚染の結果生じた福島以外のホットスポットに関して、除染できる場所は早期に除染し、できない場所の住民は避難させるべきだった。
国は汚染地帯の農畜産物と魚介類を、全面的に出荷中止措置すべきだった。また、放射性物質が検出された水道水は直ちに飲用全面禁止の措置をとるべきだった。
そうして、ある程度原子炉の状態が落ち着いてきた時点で、国は最小限チェルノブイリの基準に基づいて、移住の権利、移住の義務、強制避難地域を指定し、そこの全住民に補償措置をとるべきだった。福島県は、その結果、西部地域のみに縮小されるか、ないしはその地域を近隣県に併合させ、廃県も検討すべきだったかもしれない。
検察当局は東電の証拠隠滅を防ぐべく、早期に東電本社等の家宅捜索を一斉に実施し、あらゆる法規を総動員して容疑を固め、東電の現職・歴代幹部、原子力安全・保安院、原子力安全委員会等の官僚・学者、政治家等を逮捕し起訴すべきだった。
国は食品の放射線基準値を、少なくとも今より一桁少ない値に設定し、国民に放射能の健康被害に閾値がないこと、3・11以前の放射線量はどの程度であったか等の正しい情報を公開し、国民の理解を求めるべきだった。そして、学校給食をはじめ、子どもたちを最優先に非汚染地域の食料を与え、大人には厳密な放射線測定の結果を表示した食品を流通させるべきだった。
福島の子どもたちをはじめ、汚染地帯の子どものみならずすべての住民の健康診断を定期的に行い、被曝による健康被害が疑われる人には被曝者手帳を交付し、生涯、被曝との関連が疑われる疾病の治療は無料にすべきだった。
政府、とりわけ厚労省や環境省は、チェルノブイリから徹底的に学び、教訓を引き出すためのプロジェクトチームをつくり、情報の共有を図るべきだった。そして、汚染地帯の放射線測定、疫学調査等を徹底して綿密に実施すべきだった。

菅首相は、エネルギー事情に詳しい非原子力ムラの専門家を招いて、東電の「計画停電」はじめ、「電力が足り合い」といったキャンペーンを、事実を突きつけて阻止すべきだった。実際に電力が逼迫した場合は、他地域からの融通体制を早急に整備すべきだった。また、休止中の火力発電所の再稼働を早急に促すべきだった。
菅首相は、原子炉の状態がある程度落ち着いてきた時点で、浜岡原発のみならず、全原発の停止を各電力会社に要請すべきだった。そして、その後、原発なしでも電力は足りることを数字を持って示し、夏の電力需要逼迫に備え、産業界をはじめ、全国民に節電を訴えたうえで、明確に世界に向けて脱原発を宣言すべきだった。また、もんじゅや六ヶ所村の再処理工場の再処理リサイクル計画を中止し、プルトニウムをこれ以上生産せず、使用済み核燃料は乾式キャスク等で原則各原発敷地内で一時保管する等、より安全な保管策を講じ、最終処分に関する全国民的な議論を喚起すべきだった。
その結果、原子力ムラからの猛烈な「菅降ろし」の嵐が吹き荒れたなら、すかさず国会を解散し、「脱原発選挙」を行って国民の信を問うべきだった。その際、民主党内の守旧派や電力労組系議員らは除名し、代わりに、反原発の学者や市民運動活動家、文化人等を大量に擁立すべきだった。
選挙に勝利した民主党中心の政権は、直ちに「脱原発基本法」と「エネルギー基本計画」を策定し、発送電分離電力完全自由化を直ちに行い、再生可能エネルギーの開発・普及に全力で取り組むべきだった。
原発立地自治体に対しては、廃炉事業による雇用創出を約束したうえで、各地方の特色を生かした再生エネルギー基地化等を含む地域起こしを促し、財政支援を行うべきだった。
そして、東京電力は原発廃炉部門を国有化したうえで整理会社化し、被害住民の補償に全力で取り組ませ、足りない分は国が補償すべきだった。その際、原発被害補償税のようなものを全国民からも薄く徴収すると同時に、企業の利益に応じて徴収する仕組みをつくるべきだった。
政府は、核廃絶とともに全世界の原発の廃絶を、機会あるごとに世界に訴えていくべきだった。そして、日本は3度のヒバク国として国際社会で非核化をリードしていくべきだった

そうして5年が経ち、それでも不幸にして健康被害は生じてしまったかもしれない。また、ふるさとを失った人々の望郷の念は決して癒やされることはないだろう。しかし、一方で脱原発を実現し、放射能被害を最小限にとどめた日本は、旧福島県の東半分を半永久的に人の住めない土地にしてしまったものの、その他の地域の復興が順調に進み、3・11以前には考えられなかった再生可能な、地域循環型経済の再生を成し遂げつつあっただろう。グロテスクな原子力ムラは解体され、市民が新しい日本の新しい社会・経済復興に積極的に参加していたことだろう。


3・11ー私たちが選びとった最悪の5年後 [No Nukes]

自覚した市民とムラ社会
2011年3月11日の大地震と大津波によって発生した東京電力福島第1原子力発電所の爆発事故は、私の人生を大きく変える事件だっただけでなく、この国のあり方を激変させる歴史的事件でもあった。それは、長い「戦後」の「高度経済成長」と「戦後民主主義」「平和」な社会の中で眠り続けてきた人々の意識を覚醒させ、一部の人々を市民としてデモに駆り立てた。しかしそのデモは、「デモのできる社会」を実現し、デモを日常化させはしたか、それは半面、人々をデモに駆り立てざるをえないような社会状況の出現の反映に過ぎず、「デモによって社会を変える」までには至らなかった。デモによって社会を変えるには、デモする市民を支持する広範な市民社会の海が必要だが、この国に市民社会は不在であり、代わりに存在するのは地縁、社縁、利益縁等で結びついた複雑多様なムラ社会であった。市民社会が水のように個々の自立したH2O分子のサラサラした集合体であるのに対して、ムラ社会は油のように人々をがんじがらめに絡め取る「絆」で縛り付けられた有機物であり、デモする市民はそのようなムラ社会とは溶け合うはずもなく、完全にはじき飛ばされるだけだった。

高市発言は3・11後のマスコミ報道によって予め担保されていた
3・11後、テレビ、新聞等マスコミは、原子力ムラ御用達の「学者」を多数登場させ、官房長官の「直ちに影響はない」発言を援護射撃する「放射能は怖くない」キャンペーンで多数の国民をいたずらに被曝させる犯罪の共犯者となってきた。
その後、一部のマスコミは、3・11以前の「原発安全神話」への荷担を認め反省し、脱原発へと転じたが、放射能に対するスタンスだけは、マスコミ上げて3・11以降一貫してきた。中には「死の街」発言の揚げ足を取って「放射能つけちゃうぞ」発言をねつ造して経産相を辞任に追い込む陰謀に積極荷担するマスゴミまで現れた。そうでなくとも、ICRP(国際放射線防護委員会)基準をさらに緩めた政府の様々な基準(福島県内の様々な放射線基準や食品基準値等)を無批判に受け入れ垂れ流した。それでも最初の1、2年はNHKをはじめ放射能を特集する番組や記事も見られたが、2014年の「美味しんぼ」鼻血問題を巡ってマスコミあげてのバッシングがなされて以来、放射能はマスコミのタブーと化してしまった。
その後も、福島の子どもたちの甲状腺がんの報道はなされたが、どれも政府の「原発事故との因果関係は認められない」という見解を一方的に報じるだけで、問題を多面的に掘り下げて行う報道はほとんど見られず、そのような報道を行った番組は政府からバッシングされ、最終的にキャスター降板へと追いやられた。事故後5年が経ち、今後ますます健康被害が深刻化していくだろうが、もはやマスコミにはそうした被害の真相を報道することを期待できない。ICRPやWHO等がチェルノブイリで唯一因果関係を認めた甲状腺がんについては、今後も国や県の発表をそのまま垂れ流すことはするだろうが、その他の健康被害は、たとえ報じることがあるとしても、意図的に放射能との関連に触れない報道になるだろう。現に昨年あたりから顕著になり始めた首都圏の交通機関内での急病人の発生について報じたマスコミは皆無であり、唯一報じられたのは、急病人の発生に備えて東京駅に救急車が配備されたという報道のみであり、もちろん放射能どころか、最近鉄道内で急病人が多発し救急搬送が増えているという事実すら伏せられた。
このように、マスコミの放射能を巡る報道はきわめて一面的であり偏っており、公平さに欠けている。真実を追求し真相を解明して報道しようというジャーナリズム魂のかけらも見いだせない。こんなマスコミに、高市早苗の恫喝に対してジャーナリストの使命と誇りを賭けてたたかうことなど期待できようか? 個々の記者やジャーナリストはともかく、総体としてのマスコミには断じて否と答えざるを得ない。高市早苗の薄気味悪い薄ら笑いは、それをとうにお見通しという余裕すら感じられる。

衆参両院3分の2と改憲は、2012年12月16日に決せられた
市民社会の海ならぬムラ社会の油ではじき飛ばされた市民のデモは、政治を何も変えることができなかった。3・11当時の最高責任者=菅首相が「脱原発依存」を打ち出すや猛烈な「菅降ろし」が吹き荒れ、「野田選挙管理内閣」に取って代えられた時に、すでにその方向は決しつつあった。その野田が福島の「冷温停止状態」を宣言し「復興」への地ならしを行うや、2012年11月に「自爆解散」を行い自らの使命を終えた。
本来なら安倍晋三は、宗主国=アメリカにとっては好ましからぬ人物で、だからこそ第1次安倍内閣は短命に終わったのだが、「原子力緊急事態宣言」下の日本にとっては、彼ほど都合のいい首相はいなかった。なぜなら、これから少なくとも30年は続く「原子力緊急事態」体制を乗り切っていくには、安倍晋三の反民主的な極右思想はうってつけだったからである。
チェルノブイリ事故後、事故の最大の被害国であったベラルーシでは、ソ連崩壊後成立したルカシェンコ独裁体制が20年以上続いている。原発事故によって生じる不都合な真実を隠蔽し国民と国際社会を欺き続けるためには、そのような体制が最も都合がいいからだ。それはもちろん、この国の原子力ムラにとっても同じこと。
今後、「美味しんぼ」の雁谷哲氏のように社会的影響力のある人物が不都合な真実を述べたなら、ベラルーシでバンダジェフスキー元ゴメリ医科大学学長に陰謀事件をでっち上げて投獄したように黙らせればいいだけの話だから。もともとこの国は、その種の陰謀事件のでっち上げは得意だから、そうとなれば、東電捜査にはついに動かなかった特捜が大活躍することだろう。
チェルノブイリの第2の被害国であるウクライナでは不安定な政情が続いている。それを考えると、宗主国=アメリカのみならず、同じ原子力・核マフィア構成国のロシアや中国にとっても、安倍政権は都合のいい存在に違いない。
かくして2012年12月16日の選挙結果によって成立した安倍政権は、誕生した瞬間、原発再稼働はもとより、彼の個人的悲願である改憲まで含めた長期政権を保証されたといっても過言ではない。2013年の秘密保護法に始まり、2015年の安全保障関連法、その国会審議過程でどさくさ紛れに強行された川内原発1、2号機の再稼働と続いた道は、今後、夏の衆参同時選挙での改憲勢力の3分の2の獲得、改憲国民投票へと既定路線をまっしぐらにつき進むことだろう。

改憲国民投票は必ず成立するだろう
今の情勢では、例え民維合併がなされ4党による万全の選挙協力体制が構築されても、それによって参院選、衆院選での与野党逆転はおろか、改憲勢力3分の2の阻止さえおぼつかない。「でも、まだ改憲のための国民投票があるではないか」と思っている人がいるとしたら、大間違いだ。彼らはなぜ憲法違反を承知でマスコミにことあるごとに介入し、電波停止までちらつかせるのか? ずばり言って、改憲国民投票の時、自由な言論を封殺する体制を予め構築しておこうとすることにほかならない。おそらく、改憲国民投票時には、「不正投票」云々以前に、投票へ向けた自由な議論は全く保障されていないと考えなければならない。高校生が学校の内外で改憲議論をしたりデモをしようとすれば学校当局が介入して首謀者は退学を含む厳しい処分を下されるかもしれない。大学とて似たような状況におかれかねない。もし、改憲議論をしようとする労働組合があるとすれば、「違法な政治活動」というような労働法の「拡大解釈」によって規制され、経営陣によって首謀者は解雇されかねない。また、たとえ連日国会周辺を10万を超える人々が取り囲むようなことがあったとしても、もはやそれを報じるマスコミは皆無だろう。代わって、「憲法改正国民大会」のような草の根右翼の集会や町内会・農協・ご用組合等の地域・職場のムラ組織を動員した官製集会が連日華々しくテレビ、新聞を賑わす一方、バラエティー番組や連続ドラマに遠慮するように夜遅い時間に申し訳程度に放送された改憲をめぐるNHKの討論番組では、改憲賛成派と「改憲懐疑派」が退屈な討論を形式的にたたかわせ、改憲賛成派優勢の状況で番組は終わる。こうした中、世論調査も回を追うごとに改憲賛成が反対を追い上げ逆転していくことだろう。
世界中のどの民族よりも空気を読むのが得意な国民のことだ。こうした流れの果てに行われる国民投票は、不正などはたらかなくとも結果は知れている。
かくして安倍終身政権の完成となる。アベノミクスは完全破綻し、日本経済はますます衰退の一途をたどり、日本は朴正煕時代の韓国、マルコス時代のフィリピン、スハルト時代のインドネシアのような開発独裁ならぬ衰退独裁国となり、欧米諸国から無視されるか、TPP等によってとことん食い尽くされれいいようにもてあそばされるだけの国に成り下がるだろう。
そして、20基以上が再稼働した頃合いを見計らって起きるであろうM8以上クラスの次の地震で第2のフクシマが現実のものとなって滅亡への道をたどるか、そうでなくとも急速な衰退の道を転がり落ちていくことだろう。国民生活は社会保障制度の破綻によって格差がますます深刻になり、貧困が死と隣り合わせのものになるだろう。福島は完全に棄民政策の犠牲となり、50mSv以下の地域への帰還が強制され、一切の病死や発病は放射能との因果関係が否定され、その件についてマスコミで報道されることも全くないだろう。

3・11は「失われた20年」と決別し、21世紀にふさわしい新しい日本へ飛翔する最後のチャンスだったかもしれない。しかし、私たちが選択した未来は、それとは180°反対の滅びへの第一歩だった。あれから5年の歳月が流れ、私たちの目の前に広がる荒野を見渡す限り、どうしてもそのような結論を下さざるを得ない。


新電力会社選びのポイント [No Nukes]

4月の家庭用電力自由化が迫り、いよいよ新電力に乗り換えようといろいろ調べてみた。首都圏や関西圏と違い、中国地方は利用できる新電力会社がHTBエナジーイーレックスauでんきの3社しかない。そのうちauでんきは100%既存電力などから買い入れた電力であることが明らかなので除外し、他の2社のホームページを詳しく調べてみた。両社ともバイオマス発電の自家発電やコジェネ発電所との契約、地熱発電をはじめとした再生可能エネルギー等新規電源の開発などを謳っているが、電気料金以外は、表示義務化が見送られた電源構成比や自社電力と他社からの買い入れの比率など、具体的な数字は一切載っていない。
そこで、直接聞いてみようとしたのだが、週末でカスタマーセンターが休みだったので、両社にHPのフォームからメールで質問してみた。ところが、数日しても両社とも何の返事もないので、昨日電話してみたところ、カスタマーセンターの窓口では満足な答えが得られない。そもそも「電源構成」の何たるかさえ知らない様子で、「従量制の場合云々かんぬん」と見当外れの返事が返ってくる。それで折り返しの連絡を待つことになったのだが、結局得られた回答は、両社とも電源構成比や自社発電と他社からの調達の比率等についてはお答えできない、ただし日本卸電力取引所(主な会員企業は原発推進既存電力9社+電源開発に、東京瓦斯・大阪瓦斯・丸紅・新日鉄エンジニアリング等)等からの電源調達も行っている、というようなものだった。
大いに期待した新電力だが、拍子抜けがした。そこで、他地域で供給予定の大手もこんな感じか聞いてみることにして、とりあえずエネオスでんきに電話してみた。すると、ここではさすがに今までも企業向け売電の実績があるだけあって、電源構成比についてはすぐに回答があったのだが、「東京電力等」を含む他社からの調達比率については「電力供給の不安定さもあり正確なところは把握しかねる」というような曖昧な答えしか返ってこない。
最初は10社くらい電話してみるつもりだったが、だいたい他も推して知るべしと、やる気が失せた。それからウェブを眺めていたら、エネルギー情報局「新電力会社グループ別一覧」というページ(http://j-energy.info/?page=group)を発見した。だいたい新電力関係のページは価格比較サイトばかりで辟易していたのだが、このページは私が知りたい情報が手際よく整理して載せられていた。少々情報が古いのと、ここに掲載されている会社がすべて4月から家庭向けに電力を供給するわけではないことを除けば、大いに参考になる。
まず、このサイトの特徴は、各電力会社を「電力会社系」「ガス会社系」「石油会社系」「商社系」「金融・不動産系」「官公庁・生協・組合系」「自動車・鉄道系」「通信・ケーブルテレビ系」「設備保守会社系」「製紙会社系」「太陽光関連」「メーカー・エンジニアリング系」「小売・飲食・サービス系」にカテゴライズしていること。いちばん最初の「電力会社系」はいうまでもなく原発保有の既存電力会社だが、カタカナ系の名前にして新電力を装っているのがあるので要注意の部分だ。それから、「商社系」「金融・不動産系」「通信・ケーブルテレビ系」「設備保守会社系」「小売・飲食・サービス系」などはほぼ100%既存電力会社をはじめとした他社から買い入れた電気を小売りする形態と見て間違いないだろう。これでは、既存電力会社から新電力会社に乗り換えたつもりが、中身はそのままだったなんていうマンガのような事態になりかねない。もちろんこのような最悪の場合でさえ、4割弱しか占めない家庭用電力需要に高く電気を売りつけて7割もの利益を上げている既存電力会社は、新電力会社へは家庭用よりはるかに安い価格で電気を卸売りすることになるだろうから、その分、既存電力の儲けは減ることにはなる。喩えは悪いかもしれないが、格安スマホ会社がNTTドコモをはじめとする既存携帯会社の回線を借りているからといって、その需要が伸びれば既存携帯会社の経営を圧迫するのと同じような構造だ。
その他、「自動車・鉄道系」「製紙会社系」「メーカー・エンジニアリング系」等メーカー系の中には従来から自社で独自の発電設備を有している所も少なくないので、100%外部調達とは限らない。
そして、いちばん既存電力依存が低い部類が「ガス会社系」「石油会社系」「官公庁・生協・組合系」「太陽光関連」だろう。なかには「CO2による地球温暖化」を心配して「ガス会社系」「石油会社系」を嫌う人もいるかもしれないが、私はCO2温暖化説自体が国際原子力・核マフィアの陰謀だと思っている(http://kei-kitano.blog.so-net.ne.jp/2015-11-22)。それはさておいても、今の日本にとって地球温暖化と原発再稼働のどちらが危険かといえば、大部分の人が後者と答えるだろう。これらの範疇に属する会社から電気を買える地域の人は最優先に検討すべきだと思う。
さて、最初に戻って私が選べる2電力会社をこのサイトで調べてみたら、イーレックスは阪和興業、太平洋セメントと並んで原発3メーカーのうち日立製作所東芝が資本参加していることが分かった。そこで消去法に従い、ハウステンボスが51.1%出資する(同社のHP)HTBエナジーを選ぶしかなくなった。

現実を見ると必ずしも「電力自由化万歳」とはいえない問題点が浮き上がってくるのだが、だからといって既存電力会社をそのまま使い続ける選択肢はないと思う。ベストとはいえなくとも、とりあえず4月からよりベターな新電力会社を選んで契約し、その後、よりよい会社が参入してきたら、来年以降はそちらに乗り換えることもできる。ベストは地産地消型の地域電力会社が全国にできることだろう。
一方、既存電力会社も各社との価格競争に負けないためにも、当面原発再稼働を急ぐだろうが、それを阻止するためにも、消費者の積極的な新電力への乗り換えが必要だ。地域独占体制を崩してシェアを奪えば、原発はいずれ電力会社の重荷にならざるを得ない。また、それを促進させるためにも、総括原価方式の1日も早い廃止と、発送電分離を政府に強く迫っていくことも必要だ。
また、一戸建てを所有する家庭では、ソーラーパネルや太陽熱給水器を設置したり、新築時に断熱や廃熱、風の流れを利用したよりエネルギー効率の高い家を建てることにより、オフグリッドの完全エネルギー自給自足住宅化を図ることを検討してみるのもいいと思う。

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首都圏の住民数千万人の避難を示唆ー『亡国記』は近未来リアルであるばかりか3・11リアルだった [No Nukes]

「ことここに至っては、政府の力だけ、自治体の力だけでは、皆様(みなさま)の生活をすべてお守りすることができません」
「国民のみなさまの健康に影響を及ぼす被害の可能性が出てまいりました」
「西日本に向かう列車などに、妊娠中、乳幼児を連れた方を優先して乗車させていただきたい」
「どうか、国民一人ひとりが、冷静に行動し、いたわり合い、支え合う精神で、どうかこの難局を共に乗り切っていただきたい」
自著『亡国記』の一節ではない。本日付「東京新聞」が報じた2011年3月20日に作成された幻の「首相談話草案」の内容だ。文部科学副大臣だった鈴木寛・元民主党参院議員が、当時官邸の情報発信担当の内閣官房参与を務めていた劇作家の平田オリザ氏に依頼したものだ。原発事故の影響がさらに拡大すれば、菅首相らに提案するつもりだったという。
菅首相自身、一時は最悪の事態を想定し、首都圏5千万人の避難を覚悟していたと自著で明らかにしている。この草案は、そうした当時の緊迫した官邸の空気がリアルに伝わってくる。「日本滅亡」はすぐそこに近づいていたのだ。

東電福島第1原子力発電所爆発事故の真相解明も責任追及もなされないまま、その教訓がほとんど活かされることもなく、昨年九州電力川内原発1・2号機の再稼働が行われ、関西電力高浜原発3号機がそれに続き、今年は再稼働ラッシュが予想される。避難対象とされる周辺住民はたった30km圏に限られ、その避難対策さえなおざりにされたままで。
フクシマの悲劇は100万分の1の幸運が重なって、”あの程度”の事故で済んだとされる。だがしかし、その”幸運”だった事故が、そっくりそのまま、もし原発銀座の若狭湾で起きていたら、それだけで首都圏5千万どころか、関西圏・中部圏・首都圏9千万人が避難を余儀なくされ、この狭い国土からはみ出し、原発難民となって世界を漂流しなければならなかったのだ。
「六年前の東日本大震災に続き、私たちを襲った今般の中部大震災により、今日本国は史上まれに見る危機に瀕しています。震災に遭われた国民の皆様には謹んでお見舞い申し上げるとともに、今こそ全国民が一丸となってこの国難に立ち向かわなければなりません。」
2017年4月1日に起こる南海トラフ巨大地震によって引き起こされた未曾有の原発大爆発後、首都圏を脱出した政府の井高貴代官房長官は、逃亡先の札幌でこう抽象的な談話を発表するしかなかった。政府はもはや国民に避難を呼びかけることも放棄し、国民を救う責任も能力も失ったのだ。(『亡国記』)
もうすぐフクシマの悲劇から5年。人々の記憶だけがセシウム137の放射能よりも急激に衰えつつある。しかし、何も終わってはいないし、何も変わってはいない。むしろ放射能との長い長いたたかいはこれからが本番だ。そして、この狭い国土に住み続ける限り、再稼働を許した原発から逃れて生きることなど、私たちには不可能なのだ。

現実から目を背けるな。現実を見すえよ。想像力をはたらかせよ。知識を蓄えよ。そして、自分が何をなすべきか考えよ、行動せよ。残された時間はそう長くない。



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本格的再稼働へ向け全面復活した原子力ムラー電力自由化で非原発由来電力会社と契約し脱原発を! [No Nukes]

おそらく電事連幹部らは3・11直後に、「5年間は雌伏の時だ。じっと耐えよう」と誓い合っていたに違いない。折しも4月の家庭用電力自由化を前に、彼らは昨年秋頃から蠢き始めた。最初は電事連の名前による「エネルギーベストミックス」キャンペーンCM。その後、各電力会社の名によるイメージCM。
そして、年明けと同時に、各社五月雨式に有名タレントを起用した電力自由化向けのCMに打って出た。本日現在確認できるのは、以下4社のCMと起用タレントだ。
中国電力 篠原涼子、原扶貴子http://www.energia.co.jp/pr/cm/cm_gz1.html
中部電力 香川照之、鈴木ちなみhttps://www.youtube.com/embed/81lXXBg8WYg
北陸電力 重原左千子http://www.rikuden.co.jp/advertise/cm.html
東北電力 松山ケンイチ、久石譲https://www.tohoku-epco.co.jp/brand/cm/

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各電力会社のCMに登場しているタレントたちは、東京電力の「エコキュート」のCMに長年出演していた鈴木京香が3・11後、イメージダウンを恐れてその痕跡を消すために血眼になってネット上から動画を削除しまくっていた苦労を知らないのだろうか? 彼らには憐憫と軽蔑の情しか湧いてこない。
それはともかく、上記4電力以外の東電を除いた各社も、時に自然エネルギーに力を注いでいるふりのCMを流すかと思えば、関電の高浜原発安全キャンペーンCMのように「5重の防護壁」さながらの安全神話CMを流したりと(http://www.kepco.co.jp/corporate/report/media/takahama.html)、5年の歳月を埋め、この5年間がなかったかのように見せかけるための文字通りの宣伝戦に躍起だ。
そして各テレビ局も、悪びれる風もなくそれらを垂れ流している。「巨額の宣伝費がマスコミの口を塞いできた」という5年前に聞かれたマスコミの「自己批判」など、とうの昔に時効になったかのように。
そして何より、それを何の抵抗もなく聞き流し、目にしている大多数の国民! まるであの日から今日に至る精巧な「フクシマ忘却ロードマップ」があったかの如くだ。
既存地域独占電力会社にとって「家庭用電力自由化」は原発再稼働とセットの着地点に過ぎなかったのだろうか? 発送電分離は先送りされ、既存電力会社の圧倒的有利な条件のもと、それはまるでスマホ各社の競争のように、単なる価格競争として演出されようとしている。

電力自由化は現在実現可能な唯一の脱原発への道
しかし、世界に類を見ない政治音痴のこの国の国民も、賢い消費者として振る舞う能力はあると信じたい。12月20日付東京新聞によると、同社と新潟日報の合同世論調査の結果、東京都民の6割は東電から東電以外の電力会社への切り替えを検討し、そのうちの3割近くは「原発を持たない業者の電気を使いたい」と答えている。
家庭用電力は電力需要の4割を占めるに過ぎないが、電力会社は工場等大口需要者に安く電気を売るのと引き替えに、家庭用電力から利益の7割を上げている。だから、そのうちの半数でも既存地域独占電力会社から他社へ乗り換えが進めば、既存電力会社は大打撃を受ける。だからこそ、彼らは4月に向け、「5年計画」の総仕上げとして、テレビCM全面復活をなんとしてでも成し遂げなければならなかったのだ。
前述したように、送電網を既存電力会社が握っている現状では、彼らは政府を動かして、再生可能エネルギー業者の事業抑制に様々な圧力をかけてきたように、新電力会社が不利になるような政策を打ち出させてくることが予想されるが、そうなればなったで「賢い消費者」は黙っていないだろうし、新電力会社側も様々に知恵を絞ったセールスを考え出すことだろう。
携帯電話も、当初NTTdocomoが圧倒的シェアとインフラを誇っていたが、現在ではauとソフトバンクのシェアが年々増してdocomoを追い詰めているし、格安スマホも徐々にシェアを伸ばしている。それと同様、自由競争が進めば、確実に既存電力会社はシェアを減らし、その分、金を食うだけの原発が重荷になってくるだろう。さらに、それに追い打ちをかけるように、半世紀にわたり原子力ムラを支えてきた最大のガンであった総括原価方式も、数年以内には廃止せざるを得なくなる。価格競争に勝てなくなるからだ。
経産省は電力の構成内容の表示を義務化しなかった。しかし、各社のホームページやパンフを見れば、どこかにそれが記載されているはずだし、書かれていなければ聞けばいい。ベストは、そうして非原発由来電力のみを供給する会社と契約することだが、それでなくとも、既存電力会社から他社に乗り換えるだけで、既存電力会社には打撃になり、脱原発へ一歩ずつ近づくことになる。
その道だけが現在考えられる唯一のこの国の脱原発への道であり、それは同時に、この国を第二のフクシマー日本滅亡から救う道なのだ。

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『亡国記』公式サイトを開設しました! [No Nukes]

川内原発1号機再稼働を目前にした今年8月、『亡国記』(現代書館刊)が出版されました。その後、北海道新聞、西日本新聞(北海道新聞と同内容)、東京新聞(中日新聞)、山陽新聞の書評欄や文化欄に著者インタビュー記事が掲載されたのをはじめ、数紙で新刊紹介やコラム等で紹介していただきました。
おかげで従来から原発問題に関心を持っていて原発反対の立場が鮮明な読者の方々からはおおむね高い評価をいただき、Amazonのカスタマーレビューでも五つ星をいただいております。
ただ、私が本書を出版した目的ーすべての日本人に読んでほしい、そして考えてほしいーを達成するためには、日頃原発問題に関心の薄い人々にもっともっと読んでもらわなければならない、そんな思いから、このたび『亡国記』オフィシャルサイトを作成・公開しました。
登場人物の詳しい紹介-本書でははっきり記述されていない年齢まで含めてー、各章のタイトルとなっている都市についての情報など、これから本書をごらんになる方はもちろん、すでにごらんになった方にも興味を惹く情報が満載です。
ぜひ一度、ご訪問ください。(スマホではメニューバーが表示されない等の不具合がありますが、画面を横にすると正しく表示されます。=写真はiPhoneでSafariで表示した場合=)

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来年は棄民党=安倍政権のもと、各地で再稼働ラッシュが予想されます。そして、『亡国記』で南海トラフ巨大地震が発生し島岡原発が爆発するまで1年あまりとなりました。本書を予言の書とさせないためにも、ひとりでも多くの人々に原発問題をわがこととして考える契機とすべく、本書がさらにたくさんの人々に読まれることを願います。
『亡国記』オフィシャルサイト[右斜め下]
http://www016.upp.so-net.ne.jp/kei-kitano/

『チェルノブイリの祈り』-フクシマのメタファーとしての [No Nukes]

1986年、日本はバブル景気にさしかかり、私もそのおこぼれに与り浮かれた日々を過ごしていた。その年の4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故は、遠い鉄のカーテンの向こう側で起きた出来事で、原子炉もソ連の旧式のものだから最新の日本の原発ではありえない事故だというマスコミ報道を、疑うことを知らなかった。日本でもチェルノブイリ由来の放射能が観測されたが、独身で子どももいなかった私には、さして興味を惹くニュースでもなかった。
その後、たまに漏れ聞く事故後の現地の惨状も、遅れた社会主義国だからのことで、同情心こそ覚えても、わが身に引き寄せて考える想像力などはたらこうはずもなかった。私の脳内は、バブルの飽食によって完全にふやけきっていた。
だが、2011年3月11日を経てスベトラーナ・アレクシエービッチ著『チェルノブイリの祈り-未来の物語-』(岩波現代文庫、松本妙子訳)を読むと、その「未来の物語」がまさに「未来のフクシマ」であったことに愕然とし、言葉を失う。私の想像力はなんと貧困であり、当時のチェルノブイリを見る目がなんと傲慢であったことか……。

チェルノブイリ後、私たちが住んでいるのは別の世界です。前の世界はなくなりました。でも人はこのことを考えたがらない。
僕は、「3.11以降に世界が変わった」という感覚の中で生きています。僕の目から見たら、3.11後の世界と3.11以前の世界は別の世界と見えます。(木下黄太氏)

「検査の結果を教えてください」と頼んだら「あなたがたのための検査じゃない」といわれた。
子ども一人にかける検査の時間を短くするため、観察項目を削除したことを指すのではないかと直感した。(日野行介著『福島原発事故県民健康管理調査の闇』)

娘はまだ理解していませんが、いつか私たちにたずねるでしょう。どうして私はみんなとちがうの? どうして私は男の人に愛してもらえないの? どうして私は子どもが生めないの?
「わたしはふつうの子供を産めますか? わたしは何さいまで生きられますか?」(福島の子どもたちの手紙)

放射線測定員がある数値をいう、新聞に載るのは別の数値だ。ははーん、なにかがわかりかける。
①モニタリングポスト測定計器の指示値が10%から30%程度、低くなるように設定されている。②モニタリングポスト周辺が除染されていて住民の受ける放射能環境より30%から50%ほど、低い測定値を出すように「環境整備」されている。(矢ヶ崎克馬氏)

「あなたがたは恐れている。だから病気になるんだ。原因は恐怖心なんですよ。放射能恐怖症です。」
「放射能の影響はニコニコ笑っている人には来ません、くよくよしている人には来ます。」(山下俊一)

最初のサンプル検査をした結果、私たちのところに持ちこまれたものはもはや肉ではない、放射性廃棄物だということが明らかになりました。
「100ベクレルという食品の安全基準って事故前は放射性廃棄物と同等だったんですよ」(山本太郎氏)

牛乳の在庫がふえると、とつぜんラベルのない牛乳があらわれました。……住民をだまそうとしたのです、国がうそをついたのです。
タケノコは福島県産ではなく、すべて新潟、山形、青森県産として売り、都内の業者も「了解済み」だった。(『原発の深い闇』宝島社)

彼らはなにが起きたのか理解できず、学者や教育のある者を信じようとしたのです。……「すべて順調だ。恐ろしいことはなにもない」
「プルトニウムは飲んでも安全です」(東大教授大橋弘忠)

あなたはお忘れなんですよ。当時、原子力発電所は未来だったのです。われわれの未来だったのですよ。

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チェルノブイリの責任はいつか必ず問われることになるでしょう。……五〇年たっていようが、連中が年老いていようが、死んでいようが、彼らは犯罪者なんです!
事故の責任がきちんと問われない限り、この国は変わらないのではないか、ここで声をあげなければこのまま国民は黙らされてしまうのではないかと思いました。(福島原発告訴団武藤類子氏「通販生活」)

わが国の原子力は泥炭や石炭と同じくらい安全なんだと、みんなが教えられていたんです。
原子力発電所では、放射性物質を閉じ込め、外へ出さないために、「5重の壁」というしくみがあります。(電機事業連合会)

ミンスクには七〇〇キログラムのヨウ素剤が用意されていたが、倉庫に眠ったままでした。
私は、指導者連中が自分たちはヨウ素剤を飲んでいたとの情報を得ています。
山下俊一らは、福島県内に十分な量の安定ヨウ素剤がありながら、それを服用させなかった。
福島県立医科大学は、福島県から4000錠のヨウ素剤を入手して……職員と家族と学生が、隠れてこれを飲んでいたのである。(広瀬隆著『東京が壊滅する日』)

その夜テレビをつけてみると「扇動に躍らされないでください」といっている。それですっかり疑いが消えてしまうのです。
枝野幸男官房長官は「直ちに人体や健康に影響を及ぼす数値ではない」と記者会見で繰り返した。

チェルノブイリは、この国の一度は死にかけた体制を〈救ってしまった〉のです。
2012年12月16日、総選挙で自民党圧勝!

「キエフ旅行社はチェルノブイリ市と死に絶えた村へのご旅行をおすすめします。もちろん代金をいただきます。核のメッカへようこそ」
福島の津波や原発事故の被災地を巡るツアーは絶対にできます。バスに乗っていた間の累積の被ばく量は20〜30マイクロシーベルト。このくらいなら、今でも物理的には敷地内をバスで巡ることは可能です。(東浩紀氏)

〝独裁者〟ルカシェンコ大統領は、「ベラルーシにはチェルノブイリの問題は存在しない、放射能にさらされた土地は正常で、ジャガイモを植えることができる」と宣言したという。(訳者あとがき)
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。……」(安倍首相東京五輪招致演説)

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