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新幹線焼身自殺と日比谷・新宿焼身自殺 [Politics]

71歳の男性が新幹線内で焼身自殺を図ったニュースを聞いて思いだしたのが、去年の6月と11月に政府の集団的自衛権行使や普天間基地の辺野古移設に抗議して焼身自殺を図った63歳と同じく60代の男性のことだった。
今回自殺した71歳の男性は、遺書や政治的メッセージを遺してはいないが、日頃年金暮らしの苦しさを周囲に訴えていたという。また、あえて新幹線内で焼身自殺したことは、「年金事務所で自殺する」と言っていたことがあるということなどから、それ自体、日本の今の年金制度、ひいては社会保障制度への抗議の意味が込められていたものと考えられる。(追記:7月3日付「朝日新聞」によると、男性は事件の半月ほど前、姉に電話で「国会の前で死ぬわけにもいかないしな」と語っていたという。)また、結果的に1人の尊い命を奪うことになってしまったが、本人がいちばん前の1号車に乗車し、なおかつ最前列のデッキ付近で自殺を決行したことなどから、人を巻き込む意思はなく、むしろ人を巻き込むまいという配慮をしたとも受け取れる。
一方、昨年相次いで政治的意味を込めた抗議の焼身自殺を図った2人については、1人は白内障からタクシー運転手ができなくなりホームレスになり、その後なんとか生活保護を受けて生活していた人であり、もう1人は政治的な活動を行っていたとはいえ、重病を抱えて将来に不安を抱いていたようだ。
こうして見ると、一見関係のなさそうな3つの自殺にいくつかの共通点が見えてくる。みな、かつては経済大国ニッポンの中にそれなりの居場所を得て生活していたが、自らの老化に歩調を合わせるように進んだ日本の経済的凋落の中で、生きにくさ=生活苦を抱えて孤独な老後を送っていた。そのうえ、みな物静かで真面目な性格の人だったらしい。そして、戦後民主主義の世の中を生きて年齢を重ねた故に、その今の自身の境遇を社会との関係性の中に位置づける知性も持ち合わせていた。当然、その知性は無能・無策な政府への批判へと結びつく。
生活保護受給者の半数近くは高齢者だ。本来、高齢者は社会福祉制度がきちんとしている国では年金で十分暮らしていける経済的保障が担保されている。そして、もし病気になっても、安心して医療が受けられるのが福祉国家だ。
だが、この国では、今回の自殺者のように、基礎年金以上の年金を受給していても、都会のぼろアパート住まいで日々の暮らしに事欠くくらい生活が苦しかった。つまり、この国の社会保障制度はすでに破綻しているのだ。社会福祉など存在しないに等しい。それなのに、国は財政難を理由に、さらに社会保障費を削減しつつある。
冗談ではない。国家財政の赤字をつくってきたのは無能な官僚と無策な与党政治家の責任だ。高齢社会で社会保障費がふくらんだから赤字が増したのではない。
年金制度にしたところで、終身雇用制度の下でまともにその恩恵を受けてきた世代はどれほど存在するだろうか? あるいは、非正規の不安定雇用労働者が増えた今、まともに失業保険を受給できる人がどれほどいるだろうか? さらに、ふくらむ医療費は国民の命と健康を守るためというより、製薬会社と病院・医者の懐へと環流している。
国は一方で、公共投資の名の下に、湯水のごとく国費をゼネコンをはじめとした大企業につぎ込んできた。国の借金を国民1人当たりに平均すると830万円だそうだが、多くの国民はそんな債務を負う必要などこれっぽっちもない。何兆円もの国費を投入され、多くの国民に放射能をばらまいても潰れもせずに企業活動を行っている電力会社をはじめ、内部留保をちゃっかりため込んでいる大企業につけ(請求書)を回すのが筋というものだ。

自殺し、あるいは自殺を図った3人の高齢者の気持ちはいかばかりだったかと思うが、やっぱり死んだら負けよ!と思うのだ。上述したように、この国は社会保障制度や国家財政のみならず、国としてのモラルも民主主義の体裁さえ、すでに破綻しつつある。
これは国家の危機だ。しかし、危機はチャンスだ! 破綻したら、全く新しい発想で、ゼロから作り直せばいいだけだ。人が人らしく、それぞれ個性を尊重され、命をなにより大切にされる、そんな社会のシステムを、市民ひとり一人が知恵と力を合わせてつくっていけばいいのだ。
いや、今の国家体制、社会制度の延長線上には、この国と社会の未来はない。だから、ゼロからつくり出すしかないのだ。そのためには、今死んではならない。生きて、新しい社会をこの手にしてからでなければ、悔しくて死にきれないだろう。
君死にたまふことなかれ!
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コメント 1

あめ

こんにちは。
本当に悲しい事件が続きます。
危機はチャンス!
とても心にひびきました。

静岡県の精神科医が、
「精神科医の診察能力、態度、コミュニケーション能力について」
というアンケートをとっています。
みなさんの声を届けるよい機会になるといいです。
http://natsukari.jp/
by あめ (2015-07-08 15:42) 

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