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Jジャズの牽引役 Ai Kuwabara the Project / To The End Of This World [Jazz]

ai.jpg桑原あいのザ・プロジェクト名義の初アルバムで、管楽器やストリングス、女性ボーカル、さらにはラップを起用し、従来のトリオプロジェクトの枠を打ち破って新境地へと誘う作品だ。トリオプロジェクトは事実上ベースの森田悠介とのコラボレーションで、ふたりのバトルが生み出す化学変化が聴きものだったが、本作ではより大きな編成の音楽に挑むことで、桑原自身の音楽性を大いに飛躍させ、ワールドワイドなジャズの世界を創り出すことに成功している。
Opening-1は桑原のソロで始まり、従来なら長いソロで終わるところだが、途中からベースとドラムが加わりゲストの武嶋聡のフルートのソロへと続く。トリオでは聴けなかった新たな世界へさっそく引き込まれていく。
次のMAMAはいきなりDaichi Yamamotoのラップから入り、後半、桑原のピアノがブラスとともにスリリングに絡む。
Mother Seaは従来のトリオ演奏を最も継承している演奏といっていいが、後半からストリングス、さらには吉田沙良のボーカルが加わり様相がドラマチックに一変、重厚な曲に仕上がっている。
次のThe Errorはカナダ出身のサックス奏者Ben Wendeをフィーチャーした曲で、桑原もオーソドックスなジャズピアノを披露。
When You Feel Sadは寺山修司の「悲しくなったときは」を英訳した詩を吉田沙良が歌う軽快な曲で、桑原は珍しくエレクトリックピアノを弾いている。
Improvisation XV -Hommage A Edith Piaf-はフランスの作曲家フランシス・プーランクの曲で、徳澤青弦カルテットを主体とした演奏。
Mariaはレナード・バーンスタイン&スティーヴン・ソンドハイムの曲で、桑原と徳澤青弦のチェロのデュオ演奏。
919は再び桑原のオリジナル曲でハードなトリオの演奏。(ちなみに、919というタイトルは安保関連法が成立した2015年9月19日を指すらしい。)
Love Me or Leave Meはジャズボーカルのスタンダードで、吉田沙良が歌い桑原はブルージーな演奏を聴かせる。
そして、最後のタイトル曲To The End Of This Worldは、スローなオリジナル曲で鳥越啓介のアコーステックベースを加えたトリオの演奏で幕を閉じる。
全体的に様々な編成、曲調からなるが、桑原節といってもいい彼女独特のピアノ演奏が全体を貫いており、それがより大きなスケール感を獲得したという印象を受ける。
ジャズがグローバル化し、イギリス、フランス、ドイツ、ポーランド、オーストラリア等々、参加ミュージシャン自体はボーダレス化しつつも各国でニュージャズが盛況な現在、正直日本では優れた才能は海外に流出し、Jジャズそのものはそれら諸外国のジャズシーンからは一歩遅れをとっている感が否めないと思う昨今だが、桑原あいとザ・プロジェクトこそ、これからのJジャズの牽引役としても期待されると思う。



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