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青春は思い出の中にだけ存在する[北の都から(その4)] [Photograph]

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実は札幌は、私にとって青春そのものといってもいい街だ。数日前には親友とも十数年ぶりに再会し、旧懐に浸った。そして今日は、青春の思い出がぎっしり詰まった場所を訪ね歩いた。

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(北海道大学)

実は大学を卒業後、10年余り後に、一度だけ札幌を訪れたことがあった。その時は、まだこの街にも昔の思い出が息づいていた。しかし、その時からでも20年以上が経ち、思い出の場所はあまりに変貌しつくしていた。私は他の観光客と何ら変わらなかった。

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カルガモが気持ちよさそうに蓮池で昼寝をしていた。(同上)

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(同上)

夕方、ジャズ喫茶JAMAICAを訪れた。学生時代の一時期、毎日のように入り浸った場所だった。前に訪れたときも行ってみたが、狸小路を少しそれたビルの地下にあったそこは、同じ階にあった外国ポルノ映画館とともに消えていた。ところが2、3年前、偶然書店で、JAMAICAについて書かれた本を発見!潰れたのではなく、狸小路の、とあるビルに移転していたということを知った。

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(国営滝野すずらん丘陵公園)

当時、マスターとともに、時には一人で接客しているチャーミングで小柄な女性がいたのだが、その人が後にマスターと結婚し、今店は、夫婦を中心に、二人の娘さんも手伝い、いわば一家で経営しているという。私はきっとそのママがいるものと信じ、そうしたら、あの頃は言葉をかけたことなどなかったが、今日は「実は34年ぶりに来ました」などと言ってみようか、などと思っていた。

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チョウセンヨメナ(同上)

P1030385 (600x800).jpgしかし、店の分厚い扉を押し開けて店内に入るってみると、客のいない店にいたのは、30になろうかという若い女性だった。きっと娘さんの一人なのだろう。店の雰囲気は昔と変わらなかったが、カウンターと数人がけの椅子席だけで、昔、薄暗い地下の、夜汽車のように細長い店内に並んでいた4人がけの椅子席はなかった。仕方なく、私はカウンターの隅に席をとった。
私はまたしても、時の流れの酷薄さを感じないわけにはいかなかった。40代の一時期、ずっと思い続けてきた初恋の人に会いたい思いが募ったものの、結局“初恋の人”は私の思い出の中にしかもはや存在しないということを悟った時の思いに、おそらくそれは通じていた。
1時間ほどして「枯葉」の着メロで携帯が鳴り、仕事の電話を受けたのを機に、私は店を出ることにした。途中から初老の男の客が一人テーブル席に来ていたが、私は勢いに任せて、レジで「実は34年前…」と切り出してみた。「ありがとうございます。」事務的な答えだけが返ってきた。私は店を出て、ちょっぴり後悔した。

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赤とんぼの産卵(同上)

もはやこの街は、私にとって単なる「北の都」に過ぎない。そしてこの街にとっても、私は一人の観光客。私の青春そのものは、私の記憶の中に大切にしまわれているだけで、現実世界のどこにも存在しないのだ。

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黄昏の幌平橋

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