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ダグラスの社会信用論(連載3) [Basic income]

しばらくお休みしていたダグラスの社会信用論の翻訳を再開します。


A+B理論は、
購買力と価格がともに一つの流れと見なされるならば、購買力は価格に匹敵することができないという主張であり…、サボタージュの領域に関する文献にはその豊富な例を見いだすことができる。例えば、売れなかったり価格を維持できないために収獲した小麦を燃料として燃やしたり、数百万個のコーヒー袋を破壊したり、アルゼンチンの草原で小牛を銃で撃って殺したり、ゴム採取を抑制したりする等のことである。しかし、こうした実際の消費財の積滞問題は、半休業状態にある工場、大規模失業または耕作地の縮小に代弁される広大な未使用の生産力を考慮しないものである。…したがって、現実的または物理的観点から見ると、世界は実際には裕福であり、実際の財貨及びサービスの面で今よりはるかに裕福になることができ、したがって経済的窮乏というのは時代錯誤的な現象であるということは、疑う余地がないと私たちが見るのは正当である。…しかし、政府の代弁人たちは、私たちが非常に厳しい時期を生きおり、金融経済が必要であると主張している。…明確に、この二つの構図は両立しえない。私たちは経済的に同時に裕福でありながら窮乏することはできない。言い換えれば、金融システムは物理的・経済的生産システムの現実を反映していない。事実と論理が、私たちが裕福であるということを証明しているのに、金融システムは私たちが貧しいというならば、欠乏しているのは購買力であって商品ではないということは論を待たない。すなわち、市場に出ている商品の総価格はその商品を買うことのできる購買力を凌駕しているのである。―ダグラス、『新経済学と旧経済学』、1973
ダグラスの分析は繰り返す好況と不況に対する説明も提供してくれた。
私たち「社会信用論者」は現在の貨幣制度が事実を反映していないという。反対派は反映しているという。私は皆さんの常識に任せようと思う。1929年にほとんど熱病のように繁栄しているように見えた世界が、1930年にそのように貧しくなったということが可能なことであるのか? それほどあっという間に、あまりにも根本的に変わってすべての条件が逆転し、世界が悲惨なほど窮乏するということが、本当に可能なことであるのか? 1929年10月の特定日とその後わずか数ヶ月の間に、世界が裕福な世界から窮乏した世界に変わったと考えるのが道理に合うことなのか? 明らかにそうではない。―ダグラス、『現実へのアプローチ』、1966
恐慌当時、大部分の経済学者は「セイの法則」を支持し、恐慌の原因が消費されなかった貯蓄にあると主張した。言い換えれば、貯蓄を経済の中に戻す投資の欠乏が、商品が販売されない原因であるというのであった。ダグラスは貯蓄水準と銀行預金が不景気の間に急激に落ちたことを指摘することができた。貯蓄が恐慌の原因になったというのは不可能であった。実際にそうした主張は明確に誤りであった。それだけでなく、ダグラスは銀行の貸付システムというのは、ひとりが貯蓄したお金を他の者が投資のために借りるのではないということを指摘した。貸付は新たなお金をつくり出すことであった。銀行貸付制度による貨幣の創造という事実は、その当時広く認められていなかった。ダグラスのせいで金融経済学者が「追われて」いたというのはあまりに穏健な言い方である。彼はその分野の多くの経済学者より事態の真相をより正確に知っていた
1928年の「マクミラン委員会」は不況に関連して金融制度を調査し、ダグラスらが提起した問題を検討するためにつくられた議会調査機関であった。ダグラス自身が委員会に招致されて証拠を提出したが、権力者の間でダグラスの同調者はほとんどいなかった。彼の分析と改革案は拒否された。しかし、銀行がお金をつくり出すという事実に対する公開的な是認が最初にそこでなされた。委員会の報告書はこう延べている。
…大部分の預金は銀行業それ自体から出てくる。…銀行は創造された信用または購入された投資が当初の現金でなされた預金額の九倍になるまで貸付または投資購入を継続することができる。― 『現実へのアプローチ』
その報告書にはまた、ダグラスの理論に対する暗黙的な承認も入っていた。なぜなら、マクミラン委員会は経済が投資に依存するという事実を認めたためである。そうして不況期の間には民間投資が絶望的であるほど低調なため、政府が公的負債によって経済を再浮揚させるべきであると報告書は勧告した。しかし、政府はその勧告を無視した。
(続く)
*次回はいよいよベーシックインカムに関する部分です。
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