SSブログ

ダグラスの社会信用論(連載4) [Basic income]

「国民配当」―ベーシックインカム論
ダグラスの著述の主な難点の一つは、彼の改革案を提出する方式にあった。彼は普通の計画案を提示するより原理を議論することを楽しみ、どんなものでも特定の改革は目的に至る一つの手段に過ぎないと常に強調した。しかし何年かにわたり、ダグラスは一連の具体的な措置の大綱を提示し、多様な計画案を示した。そこにはふたつの繰り返すテーマがあった。第一に、購買力と価格が一致しなければならないということであった。人々は所得分配のために、そして経済不況を防ぐために、新たに投資したり経済を拡張する必要なしに、市場に出回っている商品を購入することができなければならない。第二の原理は、銀行システムがつくり出した負債を相殺するために、政府が負債から自由なお金を創造し供給する責任を一手に引き受けなければならないということであった。この二つの原理は様々な方式で連結することができるものであった。
ダグラスが提案した最初の改革は、企業に対する価格補助金であった。彼はそれを「正当価格」と呼んだ。人々が市場に出回っている商品を活かせない理由は、商品価格が現在の所得より高いためである。お金をつくってそれを企業に補助金として提供することによって、政府は価格低下を保障するこができ、その結果として人々が商品を買うことができる能力をさらに備えることになり、企業は自身の費用に十分に耐えることができるようになるであろう。この提案を、ダグラスは決して放棄しはしなかったが、彼の他の改革案のために急速にその重要性が減少した。
もうひとつの改革案というのは、普遍的ベーシックインカム制度である。今日人々がダグラスを記憶しているのは、主にこの改革案のためである。ダグラスはベーシックインカムまたは「国民配当」を支給することを提案した。これはすべての人々の権利として支給されるべき所得である。このベーシックインカムは金融制度の欠陥を補完し、またそれに関連する失業問題に寄与するように考案された改革措置であった。失業は現代的技術の到来とともに絶えず繰り返されるものであるとダグラスは見た。
ベーシックインカムは政府によってつくられた貨幣によって支給されるべきものであった。そして、その貨幣はいかなる時であれ購買力と物価が合致する程度に十分に供給されるべきものであった。この貨幣は市民配当の形態ですべての人々に支給され、個人がどんな仕事をして金を稼ごうが、彼の所得を支えてくれるものであった。そのおかげで商品に対する購買力が高まり、失業による貧困を軽減し、失業者が仕事を探したり自身の事業を準備する間、財政的土台を提供することになるものであった。そうしたベーシックインカムがすべての人々に支給されるため、就業中である人々も特定の雇用主に依存する必要が減り、彼らの地位も大きく改善されるであろう。それは経済的にだけでなく、社会的にも大変重要な意味を持つ改革案であった。
ダグラスは人々だけでなく経済のためにもベーシックインカムが必要であると主張した。ベーシックインカムを実施すべき社会的及び経済的根拠があり、それはすべて強力なものであった。金融制度の欠陥を考慮する時、ベーシックインカムは―経済に明らかに必要な―負債から自由な貨幣を経済の中に投入することのできるメカニズムを提供するものである。ベーシックインカムは政府貨幣として支給されるものである。それは銀行制度がつくり出した負債を相殺するように考案された、借金と関係がないお金である。もしそうしたお金が直接人々に渡されて経済の中に投入されるならば、銀行制度によって誘発された購買力欠乏現象を埋め合わせることになるものであった。ベーシックインカムの額は、負債を基盤とした成長が続く必要なしに商品を売ることができるほどの購買力を促進するように調整されるであろう。このお金は消費者に直接分配されるものであるため、企業を迂回して、したがって費用を引き上げないであろう。だから、物価上昇なしに購買力が高まり、したがってインフレと負債発生は回避されるであろう。このようになれば、経済は財政的に安定するであろう。
(続く)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。