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脱原発は「反経済(学)」の未来への道を拓く [Post capitalism]

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秋風が肌寒さを感じさせる16日夕、首都圏反原連呼びかけの2回目の経団連抗議行動があった。「脱原発」を求める国民の声に対して「経済優先」を掲げる経団連・米倉の言動は、3.11を経た日本の市民に、経済が「経世済民」などという語源とはほど遠い、支配階級のエゴイズムであることをまざまざと感じさせてくれる。
今日「経済」という時、それは「市場経済」すなわち資本主義のシステムそのものをさすことがほとんどである。そして、その資本主義市場経済を分析する学問として、18世紀に「経済学」が生まれた。資本主義経済学に対抗する学問として、19世紀にK・マルクスによって「社会主義経済学」が提唱されたが、それは本質的に広い意味の資本主義経済システムを前提としたその亜種に過ぎなかった。そして、市場経済は利潤追求を第一として、人間労働を労働力商品として物象化し、利潤を生む機械の一部と化した。
私たちは生まれたときから「労働(=資本主義的生産労働)」こそが人間にとっての唯一の価値であるというイデオロギーをたたき込まれ、学校教育を通して労働予備軍に仕立て上げられ、卒業後、賃金奴隷としての生涯を送ることになる。少なくともつい最近まで、私たちはそのような「労働=仕事中心」の生活を何の疑問もなく受け入れてきた。
しかし、20世紀末から(日本ではバブル経済がはじけた頃から)、IT革命とそれに伴うグローバル化の中で、仕事の絶対量が減り、大学を出ても正規雇用に就けない状況が生まれ、同時に、資本主義の生き残りをかけたネオリベラリズムの嵐が吹き荒れる中で、世界中(少なくとも先進資本主義諸国)の多くの人々が、そうした「労働絶対価値観」「経済(成長)中心主義」への疑問、その破綻に薄々気つき始めていた。
3.11は、世の中を、実は「表社会」とは別の「裏社会」=原子力・核マフィアがほしいままに支配していた現実を白日の下にさらけ出すことによって、「労働絶対価値観」「経済(成長)中心主義」の欺瞞性をも、同時に人々にはっきりと認識させることとなった。
人々はまず、「経済活動」が人々の命や健康の維持と両立し得ない、つまり人々の生活とは何ら利害関係のない、もっぱら一握り(1%)の「経済人」の利益のために営まれているという「隠された真実」に気づかせた。
そして、それに気づいた人々は、次に、自分たちが一生を捧げてきた「(資本主義的)労働」の意味をも、問い直さずにはおかなかった。「生活のため」=「生きるため」のはずであった「労働」が、もはや自分(たち)を生かしてくれない、往々にして殺すというからくりに、気づかせてくれたのである。
だがしかし、そうした本質的な「悟り」を得た者の多くは、どっぷりとそのシステムの中に浸りきってきた(主に正社員の)男性よりも、報われぬ家事労働に従事させられてきたり、非正規雇用の大半を占めてきた女性のほうであった。男性より放射能への感受性に優れる彼女たちを、経済活動やそれを支える私的日常生活を捨ててまで、子どもと共に困難な避難生活に踏み切らせたものも、そうしたことと決して無縁のことではないだろう。彼女らは、本能的に放射能の危険性を察知したのと同様に、「経済(成長)中心主義」、「労働絶対価値観」の「非人間性」を直感的に悟ったのだ。
今や、脱原発市民たちは、(市場)経済と訣別し、21世紀の新たな「ポスト資本主義的」自給自足共同社会の構築へ向け、第一歩を踏み出すべき時だ。その社会は、エネルギー供給をはじめ、社会の単位が小さな「ムラ」の中で持続的に自足する。それでいて、「ムラ」と「ムラ」の集合体としての「クニ」と「クニ」の間の人々の交通は、今より頻繁になるかもしれない。なぜなら、「ムラ」の住民は「ムラ」や「クニ」に縛られた従属的な身分ではなく、自分の人生を自分で主体的に生きる自由な市民たちだからだ。
そうした「徹底して分権的なグローバル世界」において、もはや原子力発電核兵器といった人類を滅亡に導く道具は、存在の余地がないことはいうまでもない。
そうした近未来へ向けた新たな時代の入口に、今私たちはようやく立ったところなのだ。しかし、その未来への道は、決して平坦でも単線的でもないだろう。しかも、その旅路へ赴く私たちは、「フクシマ」という十字架を背負っていることを、片時も忘れることができない運命にあるのだ。
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