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原発のない10年後の日本の未来を想像=創造しよう! [Novel]

2013年、「脱原発基本法」の成立により、日本社会は破滅の瀬戸際から奇跡の復活を遂げることができた。もちろん、収束に何十年もかかるであろう福島第1原子力発電所の作業の進展と放射性物質拡散の防止、そして、5mSv/年以上の汚染地域からの住民の移住、1mSv/年以上の地域からの移住の権利の保障、食品汚染の低減化、汚染瓦礫の処理等、問題は山積していた。
しかし、事故から10年を経て、日本もようやく明るい未来の光が見えてきた。
3.11直後の避難対策の決定的誤りと、その後の人権無視の被曝対策によって、福島県民をはじめとした健康被害は残念ながら避けることができなかったが、それもその後の適切な対処により、考えられ得る最少の範囲にとどめることができた。また、不幸にして現れてしまった健康被害、そして今後も発生が予想される健康被害に対して、国が最大限の支援をしていく態勢も整えられた。
一方、2013年に大飯原発3、4号機の稼働が再び停止し、国内のすべての原発と高速増殖炉もんじゅ、六ヶ所村の核燃料再処理施設の稼働が停止して以来、日本の原子力政策は廃炉と使用済み核燃料の処理のためにすべての力が注がれてきた。そして今年、福島第一原発を除いたすべての原発の原子炉から使用済み核燃料を取り出して、敷地内の安全な場所への乾式貯蔵作業が完了した。幸いその間に起きた複数のマグニチュード8クラスの地震でも、全国の原発がすべて稼働停止中であったこともあり、大きな事故を招くことなく、フクシマの悪夢の再現は回避できた。
当初、廃炉反対の声がわき起こった原発立地地域も、廃炉へ向けた具体的工程が示されると、とりあえずの雇用が確保されたことに安堵して、反対論は急速にしぼんでいった。そして、多くの原発周辺地域には、メガソーラー発電施設や風力発電施設が建設され、新たな地場産業となった。
しかし、こうした大規模自然エネルギー発電施設の供給先は、大部分が隣接地域の工場をはじめとした企業向けであった。福島の事故直後、当時の菅首相は、半ば苦し紛れと思いつきで、「10年後の1千万世帯の屋根へのソーラー発電システムの設置」を公言したが、今や1千万世帯どころか、ほとんどすべての住宅に太陽光発電設備が設置され、最新式のものは、太陽熱温水器や地下熱利用などと合わせ、夏冬問わず、一家のエネルギー需要をすべてまかなえるまでになっている。大容量の蓄電設備も普及したので、新興住宅地へ行くと、そこには電柱がない。地下に埋設されたのではなく、電線自体が消えたのだ。5年後にはこうした自給自足型電力が全消費電力の25%に達する見通しというから、3.11以前に原発が供給していたこの国の電力の比率に匹敵することになる。
自給自足スタイルはエネルギーだけにとどまらない。3.11で高まった食料の安全性への不安は、その後、地産地消型の地域農業へのニーズを高めることとなり、今では放射能汚染地域を除く大部分の地域で、食料の50%以上を半径100km以内の地域で自給できるようになっている。もちろん、国全体の食糧自給率も飛躍的に高まった。日本は今や、世界に誇るIT・ロボット産業大国であるとともに、農業大国でもある。
こうした流れに沿うように、大地震の被害を回避する意識もはたらき、都市に過度に集中していた人口が急速に地方へ分散していった。百万人以上の都市部の人口が半減した代わりに、5万人以上の都市人口が倍増した。今や、日常的な人とモノの流れは、こうした5万~10万人単位の地域の中で循環するサイクルが多くの場所で確立している。
そうすると、長距離を移動したり、高速で移動する必要性も減り、自然と自動車の数が減っていった。今や車道を走る車の大半は、バスなどの公共輸送手段と、都市間を結ぶ輸送手段であるトラックが大半を占めている。そして、多くの人々は、自転車や動力付きの1人乗り輸送手段を用いている。3.11で絶望視された「2020年までに二酸化炭素を1990年比25%削減目標」も難なく達成された。
こうしたグリーンエネルギー、グリーン産業が一定の雇用を創出したとはいえ、末期資本主義の構造的矛盾である失業問題は、根本的には解決されずにいる。3.11以降の数年間で急激に下がった日本の出生率も、ここ数年は再び上向き、将来へ向けて明るい見通しが開かれたが、出生率の改善は、せいぜい最悪の社会保障の危機にとって、一抹の光明に過ぎない。社会保障制度の根本的改革、いや、この国の富の分配方式の根本的転換を図らないことには、国家財政の改善を含めて、直面する経済・財政問題の打開は難しいことが、次第に誰の目にも明らかになってきた。ここへ来て、日本にベーシックインカムを導入する議論がようやく本格的に始まった。すでに首相の私的諮問機関である「ベーシックインカム研究会」は3年ほど前に設置されていたが、このたび内閣府の下に「ベーシックインカム検討委員会」が設置されることになった。

2022年の未来の日本から報告すべきことは、まだまだたくさんあるが、この続きは皆さんそれぞれの想像=創造にお任せすることにする。
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