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安倍晋三の歴史的な1日 [Novel]

今から3年以内のある日の晩、安倍首相は事実上NHKと民法全テレビ局を電波ジャックして、1時間の特別番組を放送した。題して「憲法改正国民投票を明日に控えて全国民に訴える

国民の皆さん。いよいよ明日、わが国が戦後、GHQ占領軍によって押しつけられてきた屈辱的な憲法を改正し、古き良き日本を取り戻す新憲法の是非を問う国民投票の日を迎えます。
国民の皆さん。私は第1次小泉内閣の時、内閣官房副長官として平成14年の北朝鮮拉致被害者5名の奪還に尽力しました。しかし北朝鮮は、その後拉致問題は解決済みとして、他の拉致被害者の存在すら認めていません。私が総理就任後、すでに○年以上たちましたが、残念ながら拉致被害者の奪還に成功していません。そのことを国民の皆さんにお詫びするとともに、なぜそれほどまでにわが国は北朝鮮に愚弄され続けなければならないのかを考えてほしいのです。
国民の皆さん。北朝鮮ばかりではありません。ここ数年、中国と韓国はわが国固有の領土である島根県竹島と沖縄県尖閣諸島の領有権を主張して、わが国を挑発し続けてきました。韓国は島根県竹島を不法占拠し、わが国固有の領土に韓国国旗を掲げるという屈辱的な状況が続いています。また中国は、たびたび沖縄県尖閣諸島周辺のわが国の領海に不法侵入してわが国を挑発し続けています。わが国固有の北方領土、すなわち北海道の国後、択捉、歯舞、色丹についても同様です。大国ロシアは一貫してわが国固有の北方領土をロシア領と主張し、2島返還などわが国としてとうてい飲むことのできない条件を持ち出してわが国を愚弄し続けているのです。
あまつさえ、某党の元総理は、「北方領土2党返還論」や「尖閣諸島は中国側から日本が盗んだと思われても仕方がない」などと売国的な発言を繰り返して国民の皆さんの激しい怒りを買いました。
国民の皆さん。どうしてわが国はこのように周辺諸国から愚弄され続けなければならないのでしょうか? 答えは明白です。憲法9条があるためです。そのため、わが国が国防軍を持てないのです。今や憲法9条を改正し、世界に誇れる国防軍を持ち、ロシアや中国と対等に渡り合い、韓国や北朝鮮に実質の伴った圧力をかけていかなければなりません。そして尖閣諸島に美しいわが国の国旗を堂々と掲げ、竹島から韓国人を追い出し、北朝鮮から残る拉致被害者を実力で奪還するのです。
国民の皆さん。国内に目を向けてみましょう。いじめ問題です。私が総理になってから、いじめ撲滅の対策を講じたために、以前に比べていじめやいじめによるものと思われる自殺は減ってきているものの、いまだいじめ問題はわが国の教育を蝕む深刻な問題です。
国民の皆さん。この問題の根幹は、古くは日教組という左翼偏向の組合組織が子どもたちに権利ばかりを教え、それには責任ある義務を伴うという当然の道理を教えてこなかった誤った偏向教育にあります。そうして、戦後の日本には、自己中心の自由や権利ばかりを主張して、それに当然伴うべき責任や義務を忘れた若者たちが育ってきたのです。
国民の皆さん。その結果はどうでしょう。古き良き美しい日本の伝統は失われ、家族は破壊され、地域の紐帯も失われ、社会には理解不能な凶悪犯罪があふれるようになってしまいました。
日本は古来、一家の主が大黒柱としてその家を経済的にも精神的にも支え、母親は慈愛を持って子どもたちを育て、子どもたちは成長した暁には、今度は年老いた両親の世話をするという美しい伝統がありました。それを破壊したのは、無責任な戦後の教育であり、その元凶となったのが屈辱的な現憲法にほかなりません。子どもは生まれたときから母親がしっかりと躾を施し、人としての礼儀や作法、家族や友人の絆や助け合い、年長者を敬う心等を教え込めば、いじめなど起こるはずがないのです。
国民の皆さん。私は総理就任以来、強力にアベノミクスを推進し、お陰様でこの言葉は平成25年の流行語大賞をいただくことになりましたが(笑い)、それにも関わらず、生活保護を受給する者が相変わらず200万人を下らないという情けない状況が続いています。しかし皆さん、このことをご存じですか。すなわち、生活保護受給者の実に4人に3人は単身者なのです。また、母子家庭の受給割合も多いのです。つまり、彼らが本来の家庭生活を営んでいれば、保護など受ける必要がないのです。生活保護世帯の半数近くは高齢者世帯です。わが国は古来、お年寄りを大切にする美しい道徳心をもった国でした。お年寄りは子どもたち、孫たちが世話をし、地域全体で支え合うことが、美しい国の美しい社会のありかたなのです。たしかに、雇用問題の深刻化から、若年層の受給割合も増えてはいます。しかし、一生懸命働いて、それでたままた運悪く失業してしまった人は、親や兄弟が支え合うのが本来の家庭のありかたではないでしょうか。わが国は古来そのように家族同士の絆と支え合いを基礎として社会が成り立ってきたのです。今こそそのような美しい伝統を取り戻すべき時です。
国民の皆さん。最後に、わが国の美しい伝統は、万世一系の天皇陛下を国の父として頂くことにより、国民が等しくひとつの家族のように愛し合い、深い絆を結んできました。ところが、あの屈辱的な憲法によって、天皇陛下の地位は象徴というようなわけの分からないものに甘んじさせられてきました。今般の憲法改正を機に、天皇陛下の地位を国の元首とはっきり規定し、日本国という美しい大家族を取り戻しましょう。日本を取り戻す。それは正しい憲法の改正から! ご静聴ありがとうございました。

同時刻、代々木の国立競技場には立錐の余地もない5万5千の老若男が集結し大型スクリーンを見つめ、安倍首相の演説が終わると一斉に「天皇陛下万歳!」の三唱が怒濤のようにわき起こり、神宮一帯に響き渡った。そして広いスタジアムでは、安倍首相言うところの「美しい国旗」があちこちで打ち振られ、スクリーン下の客席では幅数十メートルの巨大日章旗が波打っている。

スタジアム.jpg

翌日の国民投票の結果は、投票率63%、賛成票が61%を占めた。賛成票は有権者の4割に満たなかったが、安倍首相は憲法96条の「投票において、その過半数の賛成を必要とする」という文言を「有効投票の過半数」と勝手に解釈し、改憲手続きを強行した。
改憲支持は意外にも若年層に多かった。棄権率もいちばん多かったが、有効投票のなかでは、若年層の賛成票は7割にのぼった。彼らは社会に出て、運よく正社員として雇用されれば過労死寸前まで働かされ、「うつ」にでもなれば精神科や心療内科に通って向精神薬漬けになって働き続け、限界がくれば首になるか自ら首を括る。一方、多くの非正規労働者たちは、食うか飢えるかの生活を強いられながら、労働者としての権利がなんら保障されない職場で雇用打ち切りの恐怖に怯えながら、文字通りロボットのように無味乾燥な労働に従事させられる。
若年者に限らない。正社員でも景気がいくら上向こうが給料は一向に上がらず、会社に忠誠を尽くして身を粉にして働く一部の「できる社員」を除けば、いつ首になるか、追い出し部屋に追いやられるか不安の中で働いている。
そして、年をとればいったん退職したあと、非正規として70歳まで働くことを事実上義務づけられる。年金受給年齢になっても、厚生年金受給者は年々減る一方なので、多くの基礎年金のみの受給者や無年金者は生活保護に頼らざるを得ない。
それでも、それでも、彼らの圧倒的多数は自らが置かれた不条理を不条理と考えることすらできず、たとえ不条理と思っても「仕方ない」と諦めて、不遇な運命に従うだけなのだ。
だから、こうした国民の多くは、安倍政権の改憲案も自らの問題として考える余裕もなく、意識しても「仕方ない」と諦めて、賛成するか棄権した。それどころか、ごく一部の若年層を中心とした人々は、独裁権力を恣にする安倍首相の姿をヒーロー視し、国立競技場や全国あちこちに設置された巨大スクリーンの前にはせ参じたのだ。
(この作品はフィクションでありますが、登場する人物、団体等は実在する人物、団体等とおおいに関係あります。)
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