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Dr.倫太郎#4―宮川医師が演じた日本の精神科医の典型的“治療”の実態 [Anti-psychotropic drugs]

昨夜のDr.倫太郎も興味を惹く展開があった。
まず、冒頭直後の場面で、画像診断・薬物療法を得意とする宮川教授の患者(2年前に夫が亡くなってからうつ状態で、表舞台には出ていない元プリマドンナ)と以下のような会話がある。
三浦牧子 お薬きちんと飲んでるのに、めまいと吐き気がおさまりません。それに時々、膝が震えて止まらなくなるんです。
宮川 そうですか。(ディスプレイを見ている)
三浦 先生、ほら、今も膝震えてて。
宮川 分かりました。お薬増やしましょう。それでしばらく様子をみてください。はい、もうけっこうですよ。
その間、宮川が患者に背を向けて見つめているパソコン画面(電子カルテ)には次の2つの処方薬が映し出され、さらにもう1種の薬が追加される。
エスシタロプラムシュウ酸塩、デュロキセチン塩酸塩
前者は比較的新しい(日本では2011年承認)SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬・商品名レクサプロ)で、後者はSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、日本で2010年承認・商品名サインバルタ)。ともに新型の抗うつ薬だ。同一系統の薬であり、2剤を併用するエビデンスはなく、むしろ医薬品添付文書には併用に注意が喚起されている。三浦が訴えためまいも吐き気(嘔吐)、膝の震え(振戦)もそれらの薬の副作用だ。

#4.jpg

なお、宮川が「お薬増やしましょう。」と言って追加したドンペリドンはドーパミン受容体拮抗薬で、制吐薬、消化管機能改善薬として処方される。宮川は吐き気止めとして出したのだろう。
ここでも意味がないばかりか副作用を引き起こす多剤処方が行われている。三浦の訴えた症状はセロトニン症候群として、本来なら医師は減剤・減量すべき症例のはずだ。なのに宮川はそうせず、単に副作用を薬で抑えるべく新たな薬剤を処方している。典型的な日本の精神科医のやり口だ。
しかし、抗うつ薬2剤しか出していないのは日本では大いにましなことで、たいていはこれに安定剤睡眠薬(ともに依存・中毒、離脱症状・禁断症状を引き起こすベンゾジアゼピン系薬剤)や抗精神病薬(本来統合失調症患者に用いる薬)がブレンドされる。こうなったら、早期治癒どころか症状はますます悪化し、下手をすれば一生薬漬けの生活を余儀なくされる。
ところで、ドラマで宮川は、三浦を扱いかねて、彼女を倫太郎に預けてしまう。ところが、彼のように患者に薬を出すことしか知らず、患者の心と向き合えない医者でも、冒頭の場面のような診察を行っただけで「通院精神療法」を行ったとして診療報酬が3,300円も支払われるのだ。

もうひとつ注目を惹いたのは、倫太郎が夢乃の「病気」を「解離性同一性障害」と推定したことだ。これは一般に多重人格と呼ばれる症状で、倫太郎が専門とする精神分析(自己心理学)の得意とする症例だろう。
内海聡医師によれば、解離性同一性障害も人格障害も障害ではなく単なる個性ということになるのかもしれないが、身近に解離性同一性障害と似た面をもつ境界性パーソナリティー障害の人を持ち、本人も周囲の人間も大いに苦しんだ経験のある私としては、そう簡単に割り切れる問題ではない。
私は「障害」を自身の経験を踏まえて次のように定義している。
障害とは、自身がそれによって苦しみ、それを克服することを望む状態である。
例えば、性同一性障害とは、自身の身体的な性と精神的な性が一致しないことによって苦しみ、何らかの解決を本人が望む状態のことであり、外科的手術を行うか否かにかかわらず、本人が自身の性のあり方に納得し、それを受け入れた瞬間、それは障害ではなくなり個性に転化する
そうである以上、障害(病気)の治療とは自身の強い希望と意志によって主体的に関わる医師との共同作業のようなものだ。心の病だけでなく、子どもやお年寄りの障害・病気も同様だ。本人の意志・意思に反して行われる治療は治療の名に値せず、時に拷問に等しい人権侵害になる。



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