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最近ダウンロードしたアルバム(9)ー多様化するJジャズ [Jazz]

アジアで日本人ほどジャズ好きな国民も珍しい。戦前からジャズは受け容れられてきたが、戦後のアメリカ占領軍の進駐とともに、Jジャズが本格的に根付いた。秋吉敏子、渡辺貞夫らを嚆矢として、1970年前後には日野輝正、山下洋輔、ジョージ川口、菊地雅章らを排出し、その後、小曽根誠、大西順子、上原ひろみ、山中千尋ら、バークリー音楽大学を主席で卒業しなければ一流でないというような時期を経て、現在は国内外に世界的に通用するミュージシャンが数え切れないほどいる。第2次大戦後、同じようにアメリカ軍が駐留しながらも、つい最近までジャズがマイナーな存在に留まっていた隣の韓国とは好対照だ。私自身も含め、アフリカンアメリカンから始まったこの音楽が、なぜかくも日本人の心を惹きつけるのか謎だ。

6.jpgNat Birchall COSMIC LANGUAGE ★★★★★ Nat Birchall – tenor saxophone & percussion; Adam Fairhall – Indian harmonium; Michael Bardon – Bass; Andy Hay – Drums & percussion。イギリスのサックス奏者Nat Birchallのカルテットの演奏だが、ピアノの代わりにインディアンハーモニウムという楽器が用いられている。これはジャケットでも明らかなように、小型のオルガンのような楽器で、オルガンとアコーディオンの中間のような音色がする。その中世の教会音楽を思わせる旋律に乗せて、Nat Birchallのスピリチュアルな演奏が展開され、独特な世界観が醸し出される。この楽器が起用されなければ、★ひとつ減っていただろう。


1.jpgBRAD MEHLDAU After Bach ★★★★★ これまでの私のBRAD MEHLDAU評は、パット・メセニーをはじめ、多くのミュージシャンとの共演で抜群のピアノを弾くが、リーダーアルバムはちょっとね、「名脇役」といったところ? といったものだったが、このアルバムがそのような評価を一変させた。バッハの「平均律クラビーア曲集」から5曲をピックアップし、各曲の間にクラシカルなオリジナル曲を挿入し、全12曲で構成される。昔、山下洋輔もどこかで論じていたが、バロック時代の音楽は、不協和音を含む音階や対位法、通奏低音などジャズと共通する要素があるからか、古くからジャズミュージシャンによって取り上げられてきた。(私がクラシック音楽で唯一惹かれるのがバッハであるのも、そのことと関係があるのかもしれない。)しかし、このアルバムは、ジャック・ルーシェに代表されるようなそうしたジャズバロック、ジャズバッハではなく、J.S.Bachの作品に正面から取り組んでいる。そうしたバッハへのアプローチの先駆者としては、キース・ジャレットが名高い。キース・ジャレットも平均律のアルバムを出しており、彼の場合、第1巻はピアノで演奏したが、それに飽き足らず、第2巻ではチェンバロでレコーディングしたほどの熱の入れようだった。BRAD MEHLDAUのバッハはキース・ジャレットには及ばないが、After Bach的なクラシカルなオリジナル曲との調和もよく、バッハ好きな私を満足させてくれる。


4.jpgTOSHIO MATSUURA GROUP LOVEPLAYDANCE ★★★★☆ クラブジャズ、DJの松浦俊夫によるイギリスのミュージシャンを起用しロンドンで録音したジャズアルバム。といっても、松浦俊夫の過去の活躍については、私は一切知らない。でも、このアルバムでは、本欄でも以前に取り上げたカマシ・ワシントンやMAST、MENAGERIE等の音楽にも通じる21世紀のグローバルジャズの新しい潮流を体現することに成功していると思う。



5.jpg瀧北榮山、向井航、地代所悠、石若駿 innocence ★★★★☆ 最初に聴いた時は、よくある和楽器とジャズとのセッションかと思ったが、調べてみると、全員東京藝術大学を卒業し、様々な音楽シーンで活躍しているミュージシャンばかり。桑原あいとのデュオアルバムでも話題になったドラマーの石若駿を除いた3人は、藝大時代にバンドを組んでいたそうだ。瀧北の尺八はほとんどフルートに聞こえる。



2.jpgH ZETTRIO Mysterious Superheroes ★★★★☆ これぞある意味、Jジャズの典型のようなアルバム。ピアノのH ZETT Mはジャズにとらわれないあらゆるジャンルの音を融合させたような音楽を紡ぎ出すが、考えてみれば、彼の音の源流は(その派手なパフォーマンスも含めて)上原ひろみあたりにあるような気もする。


3.jpgYuji Masagaki birth ★★★★☆ 大阪でストリートライブ活動を行っていたというエレクトリック・ベーシスト正垣雄治のアルバム。私的には森田祐介のようなベースが好きで、マーカス・ミラー的な弾(はじ)くベースは好みでないが、ものすごいテクニックの持ち主であることは確か。本欄でも取り上げたことのあるポーランドの女性ベーシストKINGA GŁYKと似た音楽を作り出しているが、KINGA GŁYKの演奏が抑制的だったのに比べ、このアルバムで正垣は、これでもかというほどの超絶プレイを繰り広げている。それが前面に出すぎて、音楽自体はイマイチの水準だが、将来性に期待して★半分おまけ。名だたるミュージシャンと共演したメジャーデビュー5つ★のアルバムを待ってるよ。

(これらのアルバムは、最近Apple Musicを通してダウンロードしたアルバムを紹介しています。)

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