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パンソリはこんなにジャズだった!-Near East Quartet [Jazz]

IMG_3025.jpg今年創立50年目を迎えたECMから、韓国人のアルバムが初めてリリースされた。Near East Quartetというグループで、リーダーのソン・ソンジェ(サックス)はバークリー音楽大学で学び、同じボストンのニューイングランド音楽院に学んでいたチョン・スウク(ギター)と出会い、2009年にグループを結成、2015年に女性ドラマーのソ・スジンとボーカルのキム・ボリムが加入したという。

韓国と日本におけるジャズの受容
第2次大戦後、同じアメリカ軍の進駐を受けてジャズが流入した日本と韓国であったが、戦前からジャズを受容してきた日本では、戦後、一気にジャズ文化が開花し、ジャズ喫茶があちこちにできたり、渡辺貞夫や穐吉敏子のような世界的ミュージシャンを輩出してきたのとは対照的に、韓国ではジャズは大衆の中に根づかず、90年代前半に在韓経験のある私にとっても、この両国の違いはどこに根ざすものなのか、長年抱いてきた疑問点であった。同じ大衆音楽でも、両国は演歌からはじまり、JポップやKポップなど共通した音楽情緒基盤があるだけに、なぜジャズだけは例外なのか、いまだにその謎は解けていない。
しかし、その韓国でも、今世紀に入って、海外で本格的にジャズを学ぶミュージシャンが出てきて、ようやく大衆にジャズが音楽の一ジャンルとして受容されつつある感がある。

みごとECMサウンドに融合
本アルバムの最初の曲は、エレクトロニカルな曲調のギターとサックスの演奏だ。しかし、2曲目が始まると、女性のハスキーな独特の抑揚を持った韓国語の歌が聞こえてくる。何とパンソリではないか! しかも、バックの幻想的な演奏との違和感が全くない。70~80年代にヤン・ガルバレクが北欧のフォルクローレをジャズで叙情的に奏でたように、みごとECMサウンドと化している。
全8曲のうち、キム・ボリムのパンソリが5曲を占める。特にソン・ソンジェがバスクラリネットを吹いている3曲目の「パラム」は、ソ・スジンがマレットで太鼓(プッ)のようにドラムを叩き、最後にはキム・ボリムがチン(鉦)を叩くなど、最も韓国的趣向を凝らした演奏。
このアルバムでは全体にスローで幻想的な曲調が貫かれているので、キム・ボリムのパンソリも抑制的なものばかりだが、YouTubeで検索してみると、軽快な語り(アニリ)に乗せたけっこうハードな曲も聴かれ、それもなかなかいけている。
それにしても、韓国の伝統芸能であるパンソリが、これほどジャズであったとは驚きである。過去にサムルノリが日本のジャズミュージシャンと共演したこともあったが、意外性はその比ではない。そういえば、1993年に公開された韓国映画「西便制(ソピョンジェ)」で、最後に見せる主人公ソンファの歌唱とトンホの太鼓(プッ)の激しい掛け合いは、まさにジャムセッションそのものであった。



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