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相模原事件ー措置入院制度見直しは全くのこじつけ、責任は官邸にある! [etc.]

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が死亡した事件で、厚生労働省は14日、殺人容疑で再逮捕された元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)が措置入院していた病院や相模原市の対応を「不十分」とする検証結果を公表した。退院後に支援を続けなかったことを問題視し、現行制度の見直しが「必要不可欠」と指摘している。(朝日新聞、9月15日)
検証はあたかも、植松聖の大麻使用が事件の原因であるかのように描き出し、施設による通報とその後の措置入院の是非そのものの検討はいっさい行わず、12日後に彼を退院させ、その後のケアも行わなかったことが事件につながったかのごとく描き出しているが、すでにこのブログで何度も言及してきたように、植松聖が「精神障害」であることはまだ誰も「診断」しておらず、措置入院の際につけられた「大麻使用による精神および行動の障害」のみがすべての判断の根拠にされている。
植松聖が大麻を常用していたことは事実のようだが、大麻が犯罪を引き起こしたり「自傷、他害」つまり大量殺人の引き金として作用するという学説は、どこを探しても見つからない。もしそうなら、アメリカなどでは大麻吸引による銃乱射事件が多発しているだろうが、向精神薬(とくに抗うつ薬のSSRI)が関連しているとみられる殺人事件は無数に起きているが、大麻に関しては他の薬物ほど厳しく取り締まられておらず、ウルグアイではあのムヒカ大統領の時代に合法化さえされている。そのウルグアイからさえ、合法化によって殺人事件が激増したなどというニュースは届いていない。(ムヒカ大統領の意図するようにことが運んでいるなら、マフィア等による殺人を含む犯罪はむしろ減っているはずだ。)
一方、向精神薬の抗うつ薬=SSIRでは医薬品添付文書に「自殺企図」や「敵意、攻撃性、衝動性」があらわれることがあるとはっきりと記述されており、アメリカではSSRIが原因で自殺や他殺に至った事件で訴訟に至り、製薬会社が原告に多額の和解金を支払うケースが無数にある。日本でも1999年の全日空機乗っ取り・機長殺害事件の裁判で、東京地裁は「抗うつ剤には攻撃性や興奮状態を出現させる副作用を伴う可能性があ」ると認定しているが、大麻に関してはそうした事例は皆無だ。
断っておくが、私は大麻合法化論者ではないし、大麻愛好家でもない。むしろ他の向精神薬や麻薬同様、依存性をはじめ心身に悪影響がある薬物として禁止されるべきだと思うし、服用すべきでないと思っている。
ただ、上述した厚労省の検証には合理的根拠が欠けるといいたいだけだ。
この検証結果は、措置入院制度やそれに準じる医療保護入院制度の強化という、世界の趨勢のみならず、ようやく開放化へと向かいつつあった日本の閉鎖的な精神医療入院制度を逆行させかねない。朝日の記事でNPO法人日本障害者協議会の藤井克徳代表が述べているように、「障害者を差別する言動を生み出した社会の背景や土壌に向き合うべきだ。障害者支援策が病院や施設中心主義から脱していないなど、もっと目を向けるべきことがある。亡くなった19人の被害者の声に応えているとは思えない。

政権に物言えぬ時勢を反映
ではなぜ厚労省を含む国や警察当局は、このようにこじつけとしか思われない方向へ事件をミスリードしていこうとするのか? 相模原事件について前回述べたように(http://kei-kitano.blog.so-net.ne.jp/2016-08-26)、それはこの事件の本当の責任が、2月に大島衆議院議長宛に届けられた脅迫状を放置した警察や政府にあるからであり、だからこそ、事件の本質へ向けた真相究明を回避しようとしているのだ。しかもその後の調べで、植松聖は、「首相宛ての手紙を2月に自民党本部に持参した」ことが分かっており、「障害者を安楽死させる法制」について、安倍晋三首相に伝えようとしたものの、警備が手厚かったため断念した。そのうえで同月15日に衆院議長公邸に、考えを記した手紙を持参したという。(朝日新聞、9月3日)だから、こちらの線を追及していくと、こうした動きを適切に把握できず放置した政府官邸=首相の責任も追及せざるを得なくなるだろう。
もちろん、今の安倍独裁体制下で、このようなことは「あってはならない」。だから、マスコミもあえてこの経緯を深追いしない。
すべては安倍政権をめぐるここ2、3年のこの国の異常な空気と連動したことだ。そして、原因を「措置入院制度」へ逸らせば、精神医療制度の隔離収容政策への逆行という結果に至り、それは現政権の強権支配指向にも合致するため、一石二鳥の効果を発揮するというわけだ。
精神医療をめぐる問題は、日頃戦争反対や脱原発、アベ政治を許さない、などと叫んでいる進歩的な人々でさえ疎い場合が多いので、マスコミが口をつぐめば誰にも気づかれずにこうしてミスリードされていきかねない。だから私は、この問題に何度でも言及し、警鐘を鳴らし続ける。

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