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最近ダウンロードしたアルバム(9)ー多様化するJジャズ [Jazz]

アジアで日本人ほどジャズ好きな国民も珍しい。戦前からジャズは受け容れられてきたが、戦後のアメリカ占領軍の進駐とともに、Jジャズが本格的に根付いた。秋吉敏子、渡辺貞夫らを嚆矢として、1970年前後には日野輝正、山下洋輔、ジョージ川口、菊地雅章らを排出し、その後、小曽根誠、大西順子、上原ひろみ、山中千尋ら、バークリー音楽大学を主席で卒業しなければ一流でないというような時期を経て、現在は国内外に世界的に通用するミュージシャンが数え切れないほどいる。第2次大戦後、同じようにアメリカ軍が駐留しながらも、つい最近までジャズがマイナーな存在に留まっていた隣の韓国とは好対照だ。私自身も含め、アフリカンアメリカンから始まったこの音楽が、なぜかくも日本人の心を惹きつけるのか謎だ。

6.jpgNat Birchall COSMIC LANGUAGE ★★★★★ Nat Birchall – tenor saxophone & percussion; Adam Fairhall – Indian harmonium; Michael Bardon – Bass; Andy Hay – Drums & percussion。イギリスのサックス奏者Nat Birchallのカルテットの演奏だが、ピアノの代わりにインディアンハーモニウムという楽器が用いられている。これはジャケットでも明らかなように、小型のオルガンのような楽器で、オルガンとアコーディオンの中間のような音色がする。その中世の教会音楽を思わせる旋律に乗せて、Nat Birchallのスピリチュアルな演奏が展開され、独特な世界観が醸し出される。この楽器が起用されなければ、★ひとつ減っていただろう。


1.jpgBRAD MEHLDAU After Bach ★★★★★ これまでの私のBRAD MEHLDAU評は、パット・メセニーをはじめ、多くのミュージシャンとの共演で抜群のピアノを弾くが、リーダーアルバムはちょっとね、「名脇役」といったところ? といったものだったが、このアルバムがそのような評価を一変させた。バッハの「平均律クラビーア曲集」から5曲をピックアップし、各曲の間にクラシカルなオリジナル曲を挿入し、全12曲で構成される。昔、山下洋輔もどこかで論じていたが、バロック時代の音楽は、不協和音を含む音階や対位法、通奏低音などジャズと共通する要素があるからか、古くからジャズミュージシャンによって取り上げられてきた。(私がクラシック音楽で唯一惹かれるのがバッハであるのも、そのことと関係があるのかもしれない。)しかし、このアルバムは、ジャック・ルーシェに代表されるようなそうしたジャズバロック、ジャズバッハではなく、J.S.Bachの作品に正面から取り組んでいる。そうしたバッハへのアプローチの先駆者としては、キース・ジャレットが名高い。キース・ジャレットも平均律のアルバムを出しており、彼の場合、第1巻はピアノで演奏したが、それに飽き足らず、第2巻ではチェンバロでレコーディングしたほどの熱の入れようだった。BRAD MEHLDAUのバッハはキース・ジャレットには及ばないが、After Bach的なクラシカルなオリジナル曲との調和もよく、バッハ好きな私を満足させてくれる。


4.jpgTOSHIO MATSUURA GROUP LOVEPLAYDANCE ★★★★☆ クラブジャズ、DJの松浦俊夫によるイギリスのミュージシャンを起用しロンドンで録音したジャズアルバム。といっても、松浦俊夫の過去の活躍については、私は一切知らない。でも、このアルバムでは、本欄でも以前に取り上げたカマシ・ワシントンやMAST、MENAGERIE等の音楽にも通じる21世紀のグローバルジャズの新しい潮流を体現することに成功していると思う。



5.jpg瀧北榮山、向井航、地代所悠、石若駿 innocence ★★★★☆ 最初に聴いた時は、よくある和楽器とジャズとのセッションかと思ったが、調べてみると、全員東京藝術大学を卒業し、様々な音楽シーンで活躍しているミュージシャンばかり。桑原あいとのデュオアルバムでも話題になったドラマーの石若駿を除いた3人は、藝大時代にバンドを組んでいたそうだ。瀧北の尺八はほとんどフルートに聞こえる。



2.jpgH ZETTRIO Mysterious Superheroes ★★★★☆ これぞある意味、Jジャズの典型のようなアルバム。ピアノのH ZETT Mはジャズにとらわれないあらゆるジャンルの音を融合させたような音楽を紡ぎ出すが、考えてみれば、彼の音の源流は(その派手なパフォーマンスも含めて)上原ひろみあたりにあるような気もする。


3.jpgYuji Masagaki birth ★★★★☆ 大阪でストリートライブ活動を行っていたというエレクトリック・ベーシスト正垣雄治のアルバム。私的には森田祐介のようなベースが好きで、マーカス・ミラー的な弾(はじ)くベースは好みでないが、ものすごいテクニックの持ち主であることは確か。本欄でも取り上げたことのあるポーランドの女性ベーシストKINGA GŁYKと似た音楽を作り出しているが、KINGA GŁYKの演奏が抑制的だったのに比べ、このアルバムで正垣は、これでもかというほどの超絶プレイを繰り広げている。それが前面に出すぎて、音楽自体はイマイチの水準だが、将来性に期待して★半分おまけ。名だたるミュージシャンと共演したメジャーデビュー5つ★のアルバムを待ってるよ。

(これらのアルバムは、最近Apple Musicを通してダウンロードしたアルバムを紹介しています。)

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最近ダウンロードしたアルバム(8)ーヨーロピアン・ジャズの原点、ECM [Jazz]

前回取り上げたヨーロピアン・ジャズといえば、ECMがその原点といってもよかろう。今年創業50年目を迎えるECMのアルバムは、私も学生時代にジャズを聴き始めた頃、チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」やキース・ジャレットの「ケルン・コンサート(特にPartⅠ)」、ヤン・ガルバレクの「ウィッチ・タイ・ト」などをよく聴き親しんだし、その後もミロスラフ・ヴィトウス、ラルフ・タウナー、ケニー・ホイーラー、テリエ・リピダル、初期のパット・メセニーなど、多くのアルバムを聴いてきた。ドイツに本社があるECMだが、当初からアメリカのミュージシャンのリーダーアルバムも多く手がけてきた。しかし、その多国籍文化と透明感溢れるリリシズムを基調としたモダンな音づくりは、確かに今日のヨーロピアン・ジャズの源流である。

5.jpg福盛進也トリオ For 2 Akis ★★★★★ 日本人としては菊池雅章に次いで2人目のECMでのリーダーアルバム。福盛進也は2013年からドイツ・ミュンヘンを拠点にヨーロッパ各地で活動を続けている33歳のドラマー。「星めぐりの歌」、「荒城の月」、「愛燦燦」、「満月の夕」という時代背景の全く異なる日本の曲をオリジナル曲に挟み、フランスのサックス奏者Matthieu Bordenaveが時にソプラノかと思わせる高音域のテナーサックスでリリカルに歌い上げ、ドイツのピアニストWalter Langが透明感溢れるピアノを奏でる。福盛は、そうしたスローでメロディアスな曲にほどよく調和した絶妙のドラミングを展開する。ECMならではのアルバムに仕上がっている。


3.jpgAndy Sheppard Quartet  Romaria ★★★★☆ Andy Sheppardは今年61歳になったイギリスのサックス奏者。ノルウェーのギタリストEivind Aarset、アルジェリア出身のベーシストMichel Benita、スコットランドのドラマーSebastian Rochfordとのピアノレスのカルテットによる演奏。これもいかにもECMらしい作品で、Sheppardのサックスは80〜90年代、北欧的な叙情性を残しながらも、クラシックとの融合を志向していった時代のヤン・ガルバレクを彷彿させる。



4.jpgKeith Jarrett Gary Peacock Jack DeJohnette After the Fall ★★★★☆ 1998年、ニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターでのライヴ音源。2年間の病気休養を経て復帰後初のトリオでの演奏。CD2枚分の106分の熱演。このトリオによるスタンダード・ライブは1983年に始まり、今まで数々の名演を残してきた。それだけに、ピーコック、ディジョネットとの呼吸はピッタリ。キース・ジャレットは、それ以前、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンとのトリオ、ヤン・ガルバレクらとのカルテットでの演奏も行ってきたが、スタンダード・トリオ以降、チャーリー・ヘイデンとのデュオなどごく例外を除いて、それ以外のミュージシャンとの共演をしていない、ジャズ界には珍しい孤高のジャズ・ピアニスト。また、クラシック音楽にも造詣が深いからか、マイルスのように絶えず変化を追求するミュージシャンとは対照的に、変わらずに年輪を重ねるタイプのアーチストだ。

1.jpgANTOINE FAFARD DOOMSDAY VAULT ★★★★☆ カナダ出身のイギリスのベーシスト&ギタリストAntoine Ffardの2011から2014年にかけて発表された3枚のアルバムに4曲の未発表音源を加えたコンプリートアルバム。典型的なフュージョンアルバム。あの、伝説のマハヴィシュヌ・オーケストラでエレクトリック・バイオリンを弾いていたジェリー・グッドマンが、還暦を超えてなお往年と変わらぬ迫力あるエレクトリック・バイオリンを聴かせてくれる。

2.jpgShabel  TRUE/FALSE ★★★★☆  2012年に大学の軽音サークル仲間だった髙橋麻佑(key)、ぺいじゅん(b)、たけぶち(ds)により結成されたフュージョンバンド。10秒でJジャズと分かるサウンドだが、私的に嫌いでない。すでにEPアルバムを2枚発表しているが、前2作と比べ、全体を通して曲が一本調子なのが残念。ジャケットデザインは大好き!

(これらのアルバムは、最近Apple Musicを通してダウンロードしたアルバムを紹介しています。)
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最近ダウンロードしたアルバム(7)ーボーダレス化するヨーロピアンジャズ [Jazz]

昔、ヨーロッパのジャズといえばフランス、イタリア、それに北欧諸国等を真っ先に思い浮かべた。しかし今は、西はポルトガルから東は東欧・ロシアまで、ヨーロッパはジャズがあまねく盛んだ。しかも、ヨーロッパらしく、ひとつのアルバムに多国籍のミュージシャンが参加することがごく一般的なので、その曲風も、昔のようにちょっと聴いただけでフレンチジャズ、イタリアンジャズ、北欧ジャズ等々と区別がつかず、グローバル化している。
また、昔はヨーロッパでも日本同様、頭角を現したミュージシャンは渡米して世界的に有名になっていったし、つい10年ほど前のアフリカンジャズブームもそうだったと思うが、今は現地で質の高いジャズアルバムをどんどん発表している。それは、ここでも1枚取り上げたオーストラリア、ニュージーランドにおいても同様の状況にある。今やジャズはアフリカンアメリカの音楽から完全に脱皮し、グローバルでボーダレスな現代音楽に成長した。
アップルミュージックをはじめとする音楽配信サービスも、その傾向に拍車をかけている。毎週、有名・無名を問わず、等しく、多くのニューアルバムが配信される。リスナーは、その音楽を何の先入観もなく聴ける。昔、ジャズ雑誌を読んで、各レーベル推奨のアルバムを買わされていた頃と比べると雲泥の差で、世界のジャズシーンが一気に可視化された感がある。

2.jpgSANDRO ROY SOUVENIR DE PARIS ★★★★★ 23歳のドイツのバイオリニスSANDRO ROYの2枚目のアルバム。ジャズバイオリンといえば日本では寺井尚子がまず思い浮かび、この作品も彼女のリシャール・ガリアーノとのセッションなどを彷彿させる曲もあるが、よく聴くと全然バイオリンのキレが違う。SANDRO ROYは幼い頃からクラシックバイオリンを学び、いくつもの賞を受賞してきた。しかし、彼の演奏は単に技巧的に優れているのみならず、ジャズスピリットを豊かに表現している。その自信のほどは、ハンガリーのロマ系ベテランバイオリニスト、Roby Lakatosと3曲で共演し、のっけからガチンコ勝負のバトルを繰り広げていることからもうかがえる。アルバムは、ドイツのJermaine Landsbergerトリオをバックに、フランスのアコーディオン奏者Marcel Loefflerが加わった演奏も4曲収録。

5.jpgMENAGERIE The Arrow Of Time ★★★★★ オーストラリアのファンク・バンドBamboosのギタリストLance Fergusonが結成したグループ。Lance Fergusonはニュージーランド生まれのオーストラリア育ち。Phillip Noy(sax)、Ross Irwin(tp) 、Mark Fitzgibbon(p)、 Mick Meagher(b)、 Ben Grayson(kb)、Rory McDougall(ds)、Javier Fredes(per)、Fallon Williams、Jade Macrae(vo)はすべてオーストラリア人のミュージシャン。最初のクラブジャズ風の乗りのEvolutionに少し引いたが、最も長い2曲目のタイトル曲はじめ、21世紀の新しいジャズの可能性を示しており、昨秋このブログでも紹介したカマシ・ワシントンの作風などにも通じるものがある。それにしても、オーストラリアン・ジャズの躍進は目覚ましい。

4.jpgGABOR GADO – LAURENT BLONDIAU VEIL AND QUINTESSENCE ★★★★★ 1957年ハンガリー生まれのギタリストGABOR GADOと、1968年ベルギー生まれのトランペッターLAURENT BLONDIAUのデュオアルバム。ブリュッセルで録音。これも次のアルバム同様、バッハ的クラシックの色彩を漂わせた曲調のECMテイストの作品だ。また、LAURENT BLONDIAUのトランペットは、故ケニー・ホイーラーの晩年の作品を思い起こさせるものがある。





3.jpgKIT DOWNES OBSIDIAN ★★★★☆ KIT DOWNESはイギリスの若手ジャズピアニスト。しかし、全編オルガンによるこの作品はほとんどクラシック、それも宗教音楽に近い範疇に属するアルバム(各曲のタイトルも宗教的なものを連想させる)。いかにもECMらしい1枚だ。ただし、KIT DOWNESは教会で昔オルガンを弾いていたそうで、むしろ彼にとっては原点回帰となる作品。一般のジャズファンには馴染みにくいかもしれないが、バッハファンの私にはとても親しみが持てるとともに、厳粛な気持ちで聴ける秀逸な1枚。5のみサックスのTom Challengerが参加。3つの教会のチャーチオルガン(パイプオルガンの概念で造られた電子オルガン)で収録したという。基本的に深夜にひとりで聴くにふさわしい。

1.jpgROBERTO TARENZI JAMES CAMMACK JORGE ROSSY LOVE AND OTHER SIMPLE MATTRERS ★★★★☆ イタリアの中堅ピアニストROBERTO TARENZIとアメリカのベーシストJAMES CAMMACK、スペイン生まれのドラマーJORGE ROSSYのトリオの演奏。ROBERTO TARENZIのピアノはイタリア人らしいメリハリの効いた演奏。




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最近ダウンロードしたアルバム(6)ーコルトレーン、モンクへの賛歌 [Jazz]

5.jpgWAYNE ESCOFFERY VORTEX ★★★★★ 1975年イギリス生まれのアメリカのサックス奏者WAYNE ESCOFFERYの力作。特に1曲目のタイトル曲はコルトレーンのジャイアントステップスをも彷彿させる迫力ある演奏だ。また、わたし的には、唯一ソプラノを吹いている5のThe Devil’s Denがいい。8曲目にトランペットのJeremy Peltが加わる。以下のサイドメンも手堅い。
Wayne Escoffery - tenor & soprano saxophone / David Kikoski – piano/ Ugonna Okegwo – bass/ Ralph Peterson, Jr. – drums/ のカルテットのメンバーに、ゲストとしてJeremy Pelt - trumpet (track 8) / Kush Abadey - drums (tracks 5 & 8) / Jacquelene Acevedo - percussion (tracks 4, 5 & 6)が加わる。

1.pngSIMON CHIVALLON FLYING WOLF ★★★★★ フランスのピアニストSimon Chivallonのリーダーアルバム。ドラムのAntoine Paganotti、ベースのGraud Portal、ソプラノサックスのBoris Blancheとのカルテット。ほかにアルトサックスとトランペットにBaptiste Herbin、Julien Alourが参加。しかし、聴くべきはソプラノサックスのBoris Blancheだ。最初のCallを聴いてSonny Fortuneのコルトレーンへのオマージュ‘IN THE SPIRIT OF JOHN COLTRANE’でのTRANE AND THINGSを思い起こさせた。だが、TRANE AND THINGSがあまりに陰鬱で壮絶なのに対して、Callは突き抜けた爽快さを感じさせ、よりコルトレーンに近い。そして、そうしたトーンが全編を貫いている。フレンチ・ジャズらしさを全然感じさせない、ソプラノサックス好きの私にはたまらない一作だ。

7.jpgMAST THELONIOUS SPHERE MONK ★★★★★ 昨年はセロニアス・モンク生誕100年ということで多くのトリビュートアルバムが発表された。私の一押しは山中千尋のMONK STUDIESだが、独創性という面では引けを取らないアルバムが本作だ。山中の作品同様、エレクトリックサウンドに加えて、ビッグバンド編成でモンクを再解釈している。1970年前後のマイルスを思わせるジャケットデザインは日本人アーティストによるとのこと。MASTことTim Conleyはギター、ベース、キーボード、シンセサイザー等マルチ楽器をこなしている。他に、各種サックス、トランペット、トロンボーンの管楽器とアコーステイックピアノ等が加わる。


1.jpgDEANNA WITKOWSKI MAKES the HEART to SING: JAZZ HYMNS ★★★★☆ DEANNA WITKOWSKIは1972年生まれのアメリカのジャズピアニスト。教会音楽に強い影響を受け、それはこのアルバムにも表れているが、私はなぜか、彼女のピアノタッチを聴き、同年代の日本のピアニスト、Sayaの10年ほど前に発表された何枚かのアルバムを思い出した。Sayaの音楽はアメリカ西海岸のもっと洗練されたセンスに溢れていたが、そのピアノタッチを想起させたということは、DEANNA WITKOWSKIに女性らしい繊細さを感じさせるからだろう。疲れた時に心を癒してくれる、そんな音楽であり、そこが教会音楽にも通じるところだろうか。トリオの演奏だが、ほとんどソロピアノの印象を受ける。

6.jpgFrog of fog  Frog way back ★★★★☆ 真砂陽地を中心にしたクインテットFrog of fogのファーストアルバム。最初の10秒で日本人の演奏と分かる。でも、こういうサウンド、嫌いじゃない、ていうか、正直好き。でも、正統派にしろクラブ調にしろ、フュージョンにしろ、日本人の演奏って、どうしてこう、聴いてすぐに日本人って分かってしまうんだろう。まあ、そこがJ Jazってことなんだろうけれど…。全曲オリジナルで聴き応えあるが、中でも1のアップテンポのdialogueと、6のafter partyのファンキーなエレクトリックサウンドが秀逸。


3.jpgJORAN CARIOU the path up ★★★★☆ フランスの新進ピアニストJORAN CARIOUのデビューアルバム。JORAN CARIOUはアコースティックピアノ以外に7ではフェンダーローズの演奏も聴かせ、また、2、8、9にギターを加え、変化に富んだ演奏を展開している。


4.jpgLITHIUM RED ★★★★☆ フィンランド出身のピアニストAlexi Tuomarila、ドラマーJonne Taavitsainen、ベーシストJoonas Tuuriに、ポルトガル出身のギタリストAndré Fernandesが加わったカルテット。最近、パット・メセニー的なギターを加えたカルテットの演奏をよく耳にし、確かに新鮮味が感じられ効果的だが、あまりに似たようなアルバムが多いと食傷気味になる。

2.jpgEd Jones For Your Ears Only ★★★★☆ サックス奏者Ed Jonesのリーダーアルバムだが、ピアニスト Ross Stanleyのそれかと聴き紛うほどピアノが光っている。1曲目のBrigitte Berahaのボーカルをフィーチャーした曲ではEdのサックスは最後の方に少し出てくるだけで、リーダーアルバムとはいえ、全体的にカルテットの調和を重視した構成になっている。70年代のマッコイ・タイナーのコンボを彷彿させる演奏もあり、ブリティッシュジャズもさまざまなタレントに富んでいることを感じさせる。

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最近ダウンロードしたアルバム(5)ーピアノとベースの共演 [Jazz]

3.jpgEDWARD SIMON, SCOTT COLLEY, BRIAN BLADE STEEL HOUSE ★★★★☆ Edward Simon は1969年ベネズエラ出身のピアニスト。1989年に渡米後、テレンス・ブランチャードのバンド等で活躍した。ベースのScott CollleyとドラムのBrian Bladeとのトリオは、サックスのDavid Binneyを加えて2001年から活動しており、息のあった演奏を聴かせてくれる。このアルバムで、Edward Simonはアコースティック・ピアノのほかにも、エレクトリック・ピアノやキーボードの演奏も聞かれ、また2曲目には女性のボイスも混じるが、基本はアコースティックなピアノトリオの演奏。

1.jpgThomas Fonnesbaek & Justin Kauflin FONNESBAEK & KAUFLIN SYNESTHESIA ★★★★★ ベーシストThomas FonnesbaekとピアニストJustin Kauflin のデュオアルバム。スウェーデンで録音。Thomas Fonnesbaekは1977年生まれで、ニールス・ペデスセンに師事したデンマーク出身のベーシスト。Justin Kauflinは1986年生まれのアメリカのピアニストで、11歳の時、病気で視力を失っている。Thomas Fonnesbaekのピアノは繊細でいて力強く、70年代のキース・ジャレットを彷彿させるところがある。一方、Thomas Fonnesbaekのベースもピアノとの対話を楽しむかのように、単なる伴奏楽器の範疇を超えて、時に主旋律を力強く奏で、対等のパフォーマンスを聴かせる。とてもスリリングであるとともに、イマジネーションに富んだ作品だ。

5.jpgROSS McHENRY TRIO THE OUTSIDERS ★★★★☆ オーストラリアのベーシストRoss McHenryのリーダーアルバム。同じくオーストラリア出身のピアニストMatthew SheensとニュージーランドのドラマーMyele Manzanzaとのトリオによる演奏。エレクトリックベースとアコースティックピアノによる斬新なトリオの演奏が秀逸。10年以上前、一度だけオーストラリアのミュージシャンによるジャズを聴いたとことがあるが、たまたまかどうか、その時とは隔世の感がする良質なアルバムだ。

2.jpgANDRÉ MANOUKIAN APATRIDE ★★★★☆ André Manoukianはリヨン生まれのアルメニア系フランス人で、今年60歳のピアニスト。20歳でボストンのバークリー音楽院に学んだが、ジャズにとどまらず、あらゆる分野の多彩な音楽活動にたずさわってきた。このジャズアルバムでは祖父母の国アルメニアを思わせるオリエンタルな曲調の演奏が目立つ。実際、イラン、トルコ、シリアのミュージシャンが参加しているようだ。彼のルーツを探す音楽的探求の旅ともいえよう。

4.jpgKINGA GŁYK DREAM ★★★★★ Kinga Głykはポーランドの新進気鋭の20歳の女性エレクトリックベーシスト。ジャコ・パストリアスやエリック・クラプトンの曲をソロで引くYouTubeがアップされ、とりわけ後者は2千万ビューを記録している。本アルバムでもジャコのTeen TownとクラプトンのTears in Heavenをカバーしているが、その他の曲はすべて彼女のオリジナル。フュージョンアルバムながら、アコースティック・ピアノを用いている。ベースを前面に出した曲もあるが、他の曲も含めてどれも早弾きを誇示するようなものはなく、凄いベースを肩肘張らずにごく普通に弾いている。参加メンバーはHutchinson(ds)、Tim Garland(ss, ts)、Nitai Hershkovits(p)。
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最近ダウンロードしたアルバム(4)ー回想・1970年代 [Jazz]

2.jpg大野俊三 フォルター・アウト ★★★★☆ レコード・ショップ Universoundsの尾川雄介氏監修により1960年代後半~1970年代前半の名盤、菊地雅章のマトリックス、峰厚介のダグリとともに初CD化。1972年録音。大野俊三、当時23歳の初リーダー作。幻の名盤といわれたマトリックスは、私の気に入った曲は半分、ダグリはコルトレーンというよりも、当時絶頂を極めていたマッコイ・タイナーのコンボ(私はツボにはまったが)の焼き直し感が痛すぎて、ダウンロードには至らず。だが、どれも当時のJジャズのクオリティーの高さを物語っている。唯一ダウンロードした本作の大野俊三は、収録後、アート・ブレイキーに誘われて渡米、ギル・エバンスのビッグバンドに参加するなどして、グラミー賞受賞作にトランペッターとして2度も参加することになるが、実力派トランペッターの片鱗をすでに感じさせる。そのプレイは正確でありながらエモーショナルであり、当時のフレディ・ハバードやウディ・ショーを彷彿させる。ピアノ・エレクトリックピアノの益田幹夫、ベースの古野光昭と、70~80年代に活躍したミュージシャンのサポートも光る。最近、「これがジャズだ!」と言って中学生に往復ビンタを食らわせた浪花節トランペッターがいたが、フォルター・アウトこそ「これがジャズだ!」と誰をも納得させてくれる作品だろう。

3.jpgAzar Lawrence Bridge Into The New Age ★★★★☆ Azar Lawrenceといえば、上でも触れたマッコイ・タイナーのコンボに1973年から参加し、パワフルなテナー、ソプラノサックスを吹いていたが、本作はちょうどその時期に当たる1974年の録音。1曲を除いて自身のオリジナル曲。トランペットのWoody Shawとバイブの Woody Murray、それにボイスのJean Carnが演奏にバリエーションを加えている。70年代前半のジャズの熱気がむんむん伝わってくる1作。

1.jpgHERMETO PASCOAL  VIAJANDO COM O SOM ★★★★☆ HERMETO PASCOALの1976年の未発表音源。サンパウロのスタジオで録音。HERMETO PASCOAL は1936年生まれのブラジルのミュージシャン。作曲家、アレンジャーであるとともに、ピアノ、フルート、サックス、ギター等を演奏するマルチプレーヤーだ。渡米時にはマイルス・デイビスとも交流し、1970年のLive-Evilの録音に参加し、楽曲を1曲提供、2曲の演奏にドラム、ピアノ、ボーカルで参加している。本作ではHermeto Pascoalはエレクトリックピアノとフルート、ボイスを担当しているほか、8人のブラジル人ミュージシャンが参加している。26分以上に及ぶ4曲目のCasinha Pequeninaの演奏は圧巻!

4.jpgWILL SESSIONS KINDRED LIVE ★★★★☆ デトロイトのファンク・バンドWILL SESSIONSが70年代のマイルス・デイビスのBitches Brew、Black Satin 、What I Say、Weather ReportのRiver Peopleなどを当時の熱気そのままに忠実に再現したライブ演奏。なかでも2曲目のBitches Brewがいい。ゲストにキーボードのAmp Fiddlerが参加。

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最近ダウンロードしたアルバム(3)ー実りの秋 [Jazz]

b.jpgKamasi Washington Harmony of Defference★★★★★  アメリカの若手サックスプレーヤーKamasi Washingtonの新譜。Desire, Humility, Knowledge, Perspective, Integrity, Truthというタイトルのついた6曲からなる組曲で、各曲親しみやすいテーマのもとにアドリブが展開されていく。とりわけ最後の13分に及ぶTruthは最初のDesireのテーマに戻るが、途中から対位法的にKnowledgeのテーマがストリングスと混声コーラスで加わり、そこへKamasiのアドリブプレーが重なり、感動的な盛り上がりを見せてラストへと至る。Kamasiのサックスはコルトレーンにも通じる精神性を感じさせる。32分の短いアルバムだが、内容は大作と呼ぶに値する。

a.jpgTalibam!, Ron Stabinsky & Matt Nelson HARD VIBE★★★★★  ドラムのKevin Shea とキーボードのMatt MottelのユニットTalibam!にオルガンのRon Stabinskyとテナーサックスの Matt Nelsonが加わった演奏。2曲39分の演奏だが、キーボードの転調を繰り返す単純なテーマが通奏低音を奏でる中、Matt Nelsonのテナーがほぼ全編ハードなインプロビゼーションを繰り広げる息もつかせぬ展開に圧倒される。蛇足ながら、サルバドール・ダリの絵画か60年代後半のサイケデリックアートを彷彿させるジャケットデザインもいい。

c.jpgSimon Phillips Protocol 4★★★★★  上原ひろみのユニットですっかりお馴染みのドラマーSimon Phillipsのリーダーアルバム。ロック出身の彼も今年還暦。しかし、ハードロックのギタリストGreg Howeと、ベネズエラ出身のキーボード奏者Otmaro Ruiz との共演により、ハードで密度の濃いフュージョンミュージックを聞かせてくれ、飽きがこない。

d.jpgDima Bondarev Quintet I'm Wondering★★★★☆ ウクライナのドネツィク出身のトランペッターDima Bondarevのクインテットによるアルバム。彼はドイツのJazz Institut Berlinで学び、イギリスに移住。ドラムのJesus Vegaはアメリカ、ベースのMax Muchaはポーランド、ピアノのLudwig Hornungはドイツ、ギターのIgor Osypovはイギリスという文字通り多国籍バンド。90年代のニュー・メインストリームジャズを彷彿させる正統派ジャズの良質なサウンドが楽しめる。

e.jpgAndreas Herrmann The Child In Me★★★★☆ ドイツのピアニストAndreas Herrmannのギターを含むカルテットの演奏。パット・メセニー+ブラッド・メルドー・トリオの演奏に通じる清涼感がある。それも青少年期をテーマにした全編Herrmannによるオリジナル曲の賜物か。

f.jpgFABRICE ALLEMAN & CHAMBER ORCHESTRA UDIVERSE★★★★☆ テナー、アルト、ソプラノサックスにフルート、クラリネットまで吹くマルチリード奏者で、ジャズ、ロック、ファンクまでこなすベルギーのミュージシャンFabrice Alleman
が、ストリングスをはじめとしたオーケストラをバックに自らのカルテットで心地よいソプラノサックスの演奏を聴かせてくれる。サックスの中でもソプラノの音色を好む私にとっては、疲れた夜、酒を友にリラックスして聴きたくなるアルバム。

g.jpgWilliam Evans Donat Fisch Bänz Oester Jorge Rossy Andy Scherrer Schlitten★★★★☆ 情報が乏しく、演奏メンバーがWilliam Evans – piano、Donat Fisch – alto and tenor saxophone、Andy Scherrer – tenor saxophone、Bänz Oester – upright bass、Jorge Rossy – drumsということと、2015年にイギリスでレコーディングされたらしいこと以外は分からない。正統派ジャズのスタンダード集。しっとりとした演奏は秋の夜長に最適。
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最近ダウンロードしたアルバム(2) [Jazz]

B.jpgEkkehard Wölk Trio Another Kind of Faith★★★★☆ Ekkehard Wölkは1967年生まれのドイツ人。幼い頃からピアノを始め、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、ドビュッシー等クラシックを学び、ハンブルグ大学、フンボルト大学で音楽学を学んだという経歴の持ち主。フルートやクラリネット、チェロを加えたこのアルバムも、バッハをはじめクラシックの香り立つ演奏が全編に溢れている。クラシックの曲をジャズにアレンジした演奏は昔からあるが、クラシックの要素を取り入れたオリジナル曲を演奏するジャズミュージシャンは珍しい。

C.jpgGerald Beckett Oblivion★★★★☆ ジャズフルーティストGerald Beckett のスタンダード集。彼はアルトサックスからフルートに転校した後、サンフランシスコ音楽院でクラシックの基礎を学んだという。コンボとしての演奏は凡庸だが、スタンダード曲をフルートでアレンジした新鮮さがある。とりわけ、オープニングのマイルスの名曲So Whatは秀逸。

E.jpgSimon Millerd Lessons and Fairytales★★★★★ アメリカのトランペッターSimon MillerdによるドイツのPablo Held Trioとの共演。他にギターやテナーサックス、バスクラリネット、ボイスが加わる。全編SimonのオリジナルによるECM的なヨーロッパジャズの色彩濃い演奏に貫かれている。

D.jpg松本圭司 STARGAZER★★★★☆ T-SQUAREでキーボードを担当していた松本圭司のリーダーアルバム。典型的な日本のフュージョンミュージックだが、アコースティックなサウンドを前面に出しており、またSTARGAZERのタイトル通り12星座をイメージして作られた曲が心地よく響く。

A.jpgADAM at × PHONO TONES Dr. Jekyll - EP★★★★☆ キーボーディストADAM atとPHONO TONESとのコラボアルバム。分かりやすいジャパニーズフュージョン。後半2曲で聞かれるPHONO TONESのPedal Steelの音色が印象に残る。

F.jpgJemal Ramirez African Skies★★★★☆ ドラマーJemal Ramirezのリーダーアルバム。典型的なメインストリームジャズがCD2枚分、118分続くが、セクステットのメンバーのうち、バイブのWarren Wolf, Jr. の演奏がとりわけ光っていて、このアルバムによいアクセントを与えている。

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最近Apple Musicでダウンロードしたアルバムたち [Jazz]

1.jpgSTEFANO PREZIOSI QUARTET PLAYS STANDAEDS ☆☆☆☆ ナポリ出身の40代半ばのアルト奏者STEFANO PREZIOSIのスタンダード集。基本はパーカー派のアルト奏者だが、It Could Happen ti YouやEstateなどではソプラノも吹く。軽快なテンポの曲が多く、なじみやすい。

2.jpg山中千尋 モンク・スタディーズ☆☆☆☆☆ セロニアス・モンクを取り上げながら、アコピが前面に出た曲はほぼ1曲で、あとはシンセやオルガンでモンクを新解釈という山中千尋の真骨頂。異分野から参加したディーント二・パークスのドラミングも新鮮。中でもオープニングのオリジナル曲ハートブレイク・ヒルはとても斬新な響き。山中千尋の新境地。

3.jpgJ.A.M Silent Notes☆☆☆☆ SOIL&"PIMP"SESSIONSのリズムセクションによるトリオの4thアルバム。極めてオーソドックスで心地よいジャズを聴かせてくれる。

4.jpgChristof Sänger Descending River☆☆☆☆ ドイツ人ジャズピアニストChristof Sängerのトリオ演奏。円熟した演奏についつい引き込まれてしまう。

5.jpgBob Bralove, Henry Kaiser and Chris Muir 
Positively Space Music☆☆☆☆☆ ベテランミュージシャン3人による2時間30分に及ぶ一大ロック宇宙組曲。シンセサイザーを駆使したオーケストライゼーションは交響曲をも想わせ、かつハードで濃厚なロック感が全編を貫いている。毎晩、ものを書きながら聴いている。

6.jpgChristian Scott aTunde Adjuah Diaspora ☆☆☆☆ ジャズ100周年3部作『THE CENTENNIAL TRILOGY』の第2弾。マイルスの影響を色濃く受けながらも、独自の世界観を持った音楽をつくり出している。

7.jpgDenys Baptiste The Late Train☆☆☆☆ 文字通り「遅れてきたコルトレーン」。3のascentは、エレクトリックサックスでワウワウの利いたエフェクトの演奏も楽しめる。しかし、全体としてはトレーンへのオマージュだ。

8.jpgEstrada Orchestra Jazzbeatjaatis☆☆☆☆☆ エストニアのジャズファンクグループの衝撃の日本デビュー作。本来私の好みの範疇ではないのだが、一度聴いて病みつきになった。この存在感は圧巻!

9.jpgFRANK CATALANO & JIMMY CHAMBERLIN Tokyo Munber 9☆☆☆☆ FRANK CATALANO はとてもファンキーなサックスを聴かせてくれるが、リズムセクションは完全にコルトレーンのそれ。最後のA love Supreme, Pt.1でその両者の融合の醍醐味が存分に発揮される。

10.jpgTERRY GIBBS92 Years Young: Jammin' at the Gibbs' House☆☆☆☆ 92歳のバイブ奏者の脅威のアルバム! こんな味な演奏をするバイブ奏者がいるとは知らなかった。100歳になってもビブラフォンを元気に叩いてるんじゃないだろうか?

11.jpgBaptiste Trotignon & Yosvany Terry  Ancestral Memories Import☆☆☆☆ フランスのピアニストBaptiste TrotignonとアメリカのYosvany Terry(アルトサックス)の共演作。これといった特徴はないのだが、何となくコンビネーションがよくて聴かせてくれる。

松田聖子が歌ったジャズ「SEIKO JAZZ」 [Jazz]

SEIKO.jpg松田聖子が出したジャズアルバムが一部で話題になっているようだ。私はジャズボーカルはほとんど聴かないのだが、Apple Musicの新曲でその「SEIKO JAZZ」が先週配信されたので、3回ほど聴いてみた。「グラミー賞はじめ数々の賞を受賞した川島重行のプロデューサーで、デビッド・マシューズがリーダーを務めるマンハッタン・ジャズ・オーケストラやマンハッタン・ジャズ・クインテットの精鋭メンバーがレコーディング参加」という贅の限りを尽くしたアルバムだ。
確かに松田聖子はアイドル時代から歌唱力があったし、サントリービールのCMソングで知られる「SWEET MEMORIES」というジャジーな曲も過去にある。私は聖子ファンではないが、「SWEET MEMORIES」は彼女独特の甘えたような歌声が曲にうまくマッチし、英語の歌詞もけっこうイケていて、気に入っていた。
しかし、今度のアルバムは、なるほど55歳の円熟した松田聖子のこのアルバムに注いだ情熱が感じられるものの、ある意味優等生的過ぎていて、後に残るものがない。喩えていえば、ウィントン・マルサリスのトランペットにも似ている。
Jポップや演歌の歌手がジャズに挑戦した例は少なくない。比較的最近では、八代亜紀、UA、JUJUなど。なかでもJUJUは、ジャズを志してニューヨークに渡ったものの、自分の目指している音楽がジャズの範疇に納まりきれないものと気づきポップスに転向した過去を持つだけあって、過去2枚出したアルバムは力作で、私としては珍しく繰り返し聴いている。特に最初のアルバム「DELICIOUS」に収められた「Moody's Mood For Love 」は難曲だと思うのだが、さりげなく歌い上げていて、プロ顔負けだと深く感銘した。
逆の例としては、もう20年近く前のこと、当時人気だったあるジャズ歌手がJポップに挑戦した歌を、たまたまラジオで聴いたことがあるのだが、その時「この人、こんなに歌が下手だった?」という感想を抱いたのを覚えている。
歌というのはかくも難しいもの。演歌の達人だからといってジャズをやらせてもうまいとは限らないし、難しいと思われているジャズの歌手にJポップを歌わせても凄いという訳でもない。何を歌わせても超一流で人々をうならせることができる美空ひばりのような歌手は、百年に一度出るか出ないかだろう。
そういう意味で、松田聖子の「SEIKO JAZZ」は、「聖子らしく贅の限りを尽くして制作したジャズアルバム」以上でも以下でもないと思う。

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