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Dr.倫太郎、4名の精神科医が監修・協力 [Anti-psychotropic drugs]

昨日の「日刊ゲンダイ」に「ドラマに協力の和田秀樹医師が語る「Dr.倫太郎」の完成度」という記事が載り、和田秀樹がこのドラマに協力していることが明らかにされている。(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/159506)和田秀樹といえば香山リカと並ぶタレント名ばかり精神科医として有名だが、香山リカが日本の精神医療の現状に無自覚・無批判なのに対し、和田秀樹は日本の精神医学を支配している生物学的精神医学ではない精神分析学的精神医学(自己心理学)に属する医師だ。おそらく倫太郎は彼の学問的立場をひとつのモデルとしているのだろう。
同記事には「精神科の医療監修だけでも3人の有名な大学教授が名を連ね、ほかにも心理療法指導や外科医療監修、看護指導など計8人」の医療関係者が制作に関わっているとある。同紙には具体的な氏名はあがっていないが、あるネット情報によると、「精神科医療監修は 高橋祥友(筑波大学)、古賀良彦(杏林大学)、平安良雄(横浜市立大学)、 心理療法指導は田中あず見」とある。
高橋祥友氏は自殺予防に熱心な医師のようで、関連著書も多数書いている。われわれ反向精神薬の立場からは、自殺、とりわけ若年層の自殺にはSSRIが深く関与しており、自殺者の7割、若年層では9割以上が自殺時に向精神薬を服用していたというデータもあるのだが、もちろん氏にはそのような視点・言及はない。
古賀良彦氏は近年睡眠を専門としているようで、日本催眠学会名誉理事長を務める。生活習慣の改善とともにOTC医薬品の睡眠改善薬(抗ヒスタミン剤)を必要に応じて活用することを勧めている。(睡眠薬=ベンゾジアゼピンを第一選択肢として推奨していないだけまし)
平安良雄氏は横浜市立大学附属病院精神科部長として「早期診断と病態解明のための研究(神経画像研究、分子生物学研究、神経病理学研究など)、効果的で副作用のリスクの少ない合理的な精神科薬物療法の開発のための研究」を行っているというから、ドラマの宮川主任教授のようなものか? そっちの方の監修役だろう。
心理療法指導の田中あず見氏については情報がほとんどない。

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いずれにしろ、Dr.倫太郎は第3回まで見た限りでは、政治に喩えれば自民党・安倍政権(現状の精神医療)に対する民主党の良心派あたりの立ち位置か? 政治がますます悪質化する現状では、もし民主党良心派の政治家を主人公にしたドラマが放送されれば、官邸・自民党から猛烈なクレームがつき、テレビ局の責任者が自民党に呼び出される事態に発展するところだろう。精神医療の世界でも、5年10年前にDr.倫太郎が放送されていたら、学会の重鎮らの逆鱗を買って厳重な抗議を受けていただろう。「精神分析学的精神医学は科学的な生物学的精神医学に完全に否定された古い学問だ」と。いや、5年、10年前だったら、宮川教授のような精神科医が「清く正しい精神科医」として描かれていたことだろう。
そういう意味では、Dr.倫太郎のようなドラマが放送されるようになったのも、ここ数年、ようやく日本でも患者=薬害被害者を中心として薬物療法偏重の精神医療への批判が高まっている現状を反映したもので、歴史的必然であるともいえよう。
しかし問題は、政治の話と同様、それを受け止める国民(ドラマを見る一般視聴者)が、そこまで深読みできるかだ。実際、ネット上の話題を見る限り、ほとんどの一般視聴者は、そのような意識を持つことなく、単なるエンターテインメントとしてこのドラマを消化しているようだ。せめて、このドラマの影響で、自分や自分の周りの人間がいざ精神医療に関係を持つ事態が生じた時に、現実の精神医療が倫太郎の世界とは余りにも違うことに気づき、疑問を持ち、精神医療・向精神薬の罠にはまることを回避するよう祈るのみだ。



神経障害性疼痛治療薬は向精神薬と同じ [Anti-psychotropic drugs]

皆さんも下のような「神経の痛み」のCMを見たことがあると思う。そして、何となく嫌な感じを抱いている人もいるだろう。私もそのひとりで、気になって詳しく調べてみた。


これも、1年ほど前にシオノギとイーライリリーの「うつの痛み」キャンペーンで問題になった「啓発CM」の一種で、ちょっと注意して見れば分かるように、広告主はファイザーエーザイだ。武田鉄矢「お医者さんへ行きましょう。まず相談してみよう。詳しくは「神経の痛み」で検索」と言っているので、「神経の痛み」でネットを検索してみると、前々回のブログで紹介したADHDの場合と似たようなHPが現れる。そこの「痛みの治療法」の中の「薬物療法」をクリックすると、何種類かの薬が紹介されているが、そのうち神経障害性疼痛治療薬は「国内外のガイドラインでは、神経の痛み(神経障害性疼痛)の治療に最初に用いる薬剤として推奨されています。」と書かれている。その薬のひとつであるリリカ(プレガバリン)こそ、ファイザーが製造販売しエーザイが販売提携している薬なのだ。

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その説明図を見ると、向精神薬の説明で見慣れたシナプスの図が描かれている。日本では神経障害性疼痛の治療薬として承認されているが、浜六郎氏によると、EUでは抗てんかん薬や抗不安薬としても用いられる薬で、神経障害性疼痛の治療薬としては第二選択薬剤との位置づけだそうだ。
そして、浜氏によると、リリカはベンゾジアゼピンと同じ作用をするという。めまい、傾眠、意識消失等の副作用のほかに、離脱症状が指摘されているのだ。
戸田克広著『抗不安薬による常用量依存』にはリリカによってベンゾの長期使用を中止できた報告例が載っているが、それもそのはずだ。ベンゾジアゼピンを同じ作用をする別の薬に置き換えただけなのだから。
さらに問題なのは、上のHPにも鎮痛補助薬として紹介されているのが、抗うつ薬(SSRI、SNRI)、抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン)。それらの向精神薬も痛みやそこからくる不安の緩和作用があるとして広く使用されているのだ。ベンゾに関していえば、精神科・診療内科以外に、まず睡眠薬・睡眠導入剤として内科・婦人科等広範な医療現場で用いられているばかりか、慢性の痛みの治療薬として整形外科・神経科等様々な科で用いられている。実際私も、ある慢性の痛みの治療を受けた際、第一選択薬が思うような効果を発揮しなかった時、医師からSSRIやベンゾを勧められたので、厳しくたしなめた経験がある。精神科・心療内科の医師は大部分向精神薬の危険性を認識しながら処方する「確信犯」とするなら、他科の医師は無知(不作為)に基づいて犯罪に加担しているようなものだ。
したがって、「お医者さんへ行きましょう。まず相談してみよう。詳しくは「神経の痛み」で検索」することは、慢性の痛みの解決になるどころか、向精神薬依存症への道を切り開くことになるかもしれないのだ。

ちなみにこのCMに出演している武田鉄矢だが、金八先生が終わってからは、「原発はトイレのないマンションのようなもの。だから、もんじゅが必要なんです」とか、最近では「原発再稼働阻止なら1日6時間、テレビ放送やめる覚悟を」などととんちんかんな発言を繰り返し、金八先生の面汚しをしている。母親がいたらきっとこうしかりつけるところだろう。
コラ、鉄矢!なんばしようとかいなこの子は。近所の人からなんば噂さてようかしっとうとか。武田んバカ息子は原子力ムラに欺されて、やれもんじゅが必要たい、やれ原発再稼働やめるならテレビ放送やめろと、原子力ムラのバカ息子、バカ息子って、噂されよっとう。そのうえ、医療ムラのワルにも欺されて、変なCMまで出よろうが、ほんなこと、母ちゃん情けなか。ほんなこと、はらん立つ!



もし、お子さんがADHDなら絆はつなぎ止められるかもしれない。……薬という悪魔の絆で! [Anti-psychotropic drugs]

最近、向精神薬のことをこのブログにもよく書いているせいか、検索サイトを開いていると「もし、お子さんがADHDなら絆はつなぎ止められるかもしれない。」というバナーがよく登場する。それどころか、先日は朝、寝床でスマホを開いて天気予報を確認していたら、何気に「もし、お子さんがADHDなら絆はつなぎ止められるかもしれない。」という文字が目に飛び込んできたので、思わず「こりゃ何だ?」とタップしてしまった。
ADHDと自分の子どもを結びつけて考えている親がいたら、なにも検索してあれこれ調べなくても、日頃そういうサイトを見たりしていると、自然にこれが目に入ってくる仕掛けだ。行動ターゲティング広告というやつだ。

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読むと、多くの大学教授や医師らが監修に関わっているので、公共機関のホームページと見まがうが、よく見ると下に問合せLillyとあり、そこをクリックすると日本イーライリリー株式会社という製薬会社のHPに飛ぶ。
しかし、よほど注意して見ないとそんなことは分からない。内容も、すぐ薬には結びつかない。うちの子に何が?→どうしたらいいの?→どんな解決方法が?→うちの子の未来とあって、最後にお医者さんに相談へと行きつくつくりになっている。

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しかも、「うちの子、もしかしてADHD?」という疑問を持ったり、学校でそう言われたりした親にきわめて懇切丁寧に、分かりやすく説明してくれる。ADHDの子を持つ母親たちの対談なども載っている。なかでも傑作はアニメ「ADHDのお子さんの日常」だ。ADHDの翔太という子が主人公なのだが、私など、「この子天才じゃない? 将来が楽しみだ」と思うのだが、親や教師にとっては手のかかる子=ADHDということにされてしまう。このビデオを見ていて思ったのだが、クレヨンしんちゃんなんか、児童精神科医の手にかかれば典型的なADHDということなのだろう。私は子どもが小さい頃からしんちゃんを見ており、子どもが成長した今も、毎週欠かさず見ている。しんちゃんの大ファンなのだが、ああいう子は現実の社会では迷惑な子として受け入れられないのだろう。治療の対象なのだ。

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「治療後の未来」には「10年後の翔太君」というアニメもあるのだが、都立高校に通っている翔太は、驚くことにまだ病院に通っている! 10年も薬を飲み続けたら、翔太君の診断名はADHDから双極性障害とか統合失調症に変わっているかもしれない。だいいち、このアニメのように学校へ通えているかもおぼつかない。
ADHD?―とわが子を疑うお母さん、お父さん! このHPのお母さん方の対談でも述べられているように「私たちの子どもが小さい頃は ADHDという概念がなかったから、ずーっと「育て方が悪い」って言われてきた。」ADHDという「障害」は1987年にアメリカで「発明」された障害なのです。「だから ADHDって診断されたときにホッとした」? Dr.倫太郎なら、「あなたのお子さんは障害ではなく、お子さんの個性です」と言うでしょう。そして、「お薬では治すことができません」とつけ加えるかもしれません。
疑問に思われた方は、例えば以下のようなブログをご覧になってください。
精神医療の真実  聞かせてください、あなたの体験http://ameblo.jp/momo-kako/
ぶどうの枝(子どもと精神科医療)http://ameblo.jp/angsanaorchard/entry-12019120180.html
上記のHPとは全く違う現実を目にすることでしょう。
あるいは最近出版された次の本にも、ADHDを含む発達障害の子どもへの薬の投与に関して詳しい記述があります。

さらに薬の怖さについて知りたい方は以下をご参考に!



今後も楽しみなDr.倫太郎-日本の精神医療の病巣を見事に活写 [Anti-psychotropic drugs]

Dr.倫太郎第2回も見せてくれた。
以下は精神医療に関連する今回の主な会話部分だ。
日野倫太郎と宮川精神科主任教授の会話
宮川 スペクト検査の画像から判断すると妄想型統合失調症だと思われます。まずはリスペリドン*を投与し症状の改善を待つのが定石でしょう。
日野 そう判断するのは早すぎるんじゃないでしょうか? 宮川先生は患者さんとお話はされましたか?
宮川 患者の話に惑わされるから誤診が生まれるんだ。あれはカプグラ症候群**だ。やはり、妄想型統合失調症で間違いないでしょう。妄想型統合失調症は精神療法だけでは押さえ込めません。つまり日野君はこの患者には役立たずということです。
日野 風間さんにカプグラ症候群の妄想がなかったとしたら、妄想を抑える薬を投与してもよくはなりません。病名を決める前に、もっと患者さんの話を聞いたほうがいいんじゃないでしょうか?
宮川 時間のロスだ。
日野 ロスって、患者さんと向き合うのはいちばん大切な時間じゃありませんか?
宮川 日野君の治療法だと、いったい何十時間話し合えばいいんでしょうかね?
*非定型抗精神病薬の一種
**家族・恋人・親友などが瓜二つの替え玉に入れ替わっているという妄想を抱いてしまう精神疾患の一種。(Wikipediaより)
倫太郎の独白(叫び) お前みたいな精神科医がいるから患者は迷惑するんだ。薬だけに頼るんじゃねえ。
大物作家・風間との会話
日野 風間さんは妄想の天才です。そしてそれはあなたの個性です。
風間 だからなんだ?
日野 短期精神病性障害*。これが僕の診断です。
風間 治療が必要なのか?
日野 いいえ。風間さんの場合は急性で一時的なものでした。社会生活上お困りでないなら、治療は必要ないと思います。
*短期精神病性障害は、少なくとも1日は続くが1カ月未満で、最終的に正常な病前の機能状態に戻る妄想、幻覚、またはその他の精神病症状からなる。この障害は、重度のストレスにより疾患感受性の人々に生じるのが典型である。(日本MSD社HPより)
蓮見外科主任教授 日野君は客寄せパンダとしては優秀ですが、患者の症状をすべて個性にしてしまったら、精神科に患者は1人もいなくなってしまいます。

これらの会話だけでも、現在の日本の精神医療の現状・問題点を見事に描ききっているといっても過言ではないだろう。倫太郎もまた精神科医のひとりとして患者に診断名を下す習性があるようだが、精神疾患=個性ととらえる倫太郎の対処法=治療は、少なくとも日本の精神科医に少なくはない「良心的精神科医」の範疇をはるかに超えている。
次回以降も楽しみだ。320万人の「精神疾患患者」が、このドラマを通して、自分が受けている「精神医療」がいかに意味のないどころか有害なものであるかに気づき、薬との関係を断ち、自己解放を成し遂げる契機になってもらいたいと思う。そして、日頃精神医療とは無縁な多くの視聴者が、精神科って患者の話もろくに聞かず、やたら薬ばかり出したがる恐いところなんだと正しく認識してくれれば幸いである。
ちなみに、倫太郎と夢乃の恋の展開も先が読めてきたが、恐らくそれも精神医療と無関係ではなさそうだ。倫太郎が夢乃の「症状」に気づき、それと向き合って「治療」することで、夢乃を苦しめている問題から解き放っていくように思われる。

※番組最後に以下のようなテロップが流れるが、これはテレビ局の責任回避策というより、悪辣な製薬会社や精神医学界からのクレームを事前に封じる対策と見るべきだろう。

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(精神)薬信仰、反向精神薬-どちらがカルト? [Anti-psychotropic drugs]

ひと月余り前、ちょうど自著『のむな、危険!-抗うつ薬・睡眠薬・安定剤・抗精神病薬の罠』の見本が数冊手元に届いた頃のことだった。私はたまたまある会で、30代前半の青年に出会い、彼がパニック障害で3ヵ月前からメンタルクリニックに通っていると聞いたので、「今ならまだ間に合う」と言って、持っていた本を彼に手渡した。私は、彼のような人にこそ読んでほしいと思いこの本を書いただけに、内心「これで1人、人生を台なしにされ、めちゃめちゃにされるかもしれない人を救うことができた」と得心したものだった。
ところが、数日前、その会に参加していた知人からショッキングな事実を知らされた。彼がその後、ある人に「自分は薬に救われた」と言ったそうなのだ。実は、彼は親友を自死で失っている。その親友は死の前に鬱で向精神薬を服用していた。そして、向精神薬被害者の知人も、肉親を自死で失っているそのまた知人も、その会で向精神薬の危険性を訴えていたのだ。
どうやら彼は、それ以前から向精神薬あるいは薬一般への絶対的な信頼というか信仰があり、自分のパニック障害が薬によって一時的に癒されたためその信仰がいっっそう深まり、私たちの声には聞く耳を全く持たなかったようなのだ。あるいは、その会での知人やそのまた知人、あるいはいきなり本を手渡した私の存在を、カルト集団がグルになって押しかけてきた、というように感じとったのかもしれない。だとしたら、私の本など読む気も起こらないのは当然だろう。
今も深刻な後遺症に苦しむ知人は、「そのうち痛い目に遭えば、彼も気づくだろう。今はその時期じゃなかったのだろう」と冷たく彼を突き放した。しかし、私は彼を救うことができなかったことが無念でならない。
私が向精神薬の問題に関わるようになって、多くの被害者、そして苦しい思いをして断薬をした人々に出会ってきたが、一方で、向精神薬の危険性を知る機会を持ちながらも、自らそうした情報を遮断して、すでに薬のせいで症状が悪化しているにもかかわらず、医者や薬への信仰を断てない人々もまた、何人も見知ってきた。
私の場合は、そもそも最初から向精神薬への恐れ、常用することへの不安があったので、医師への不信も芽生えたし、はっきりとは分からないまでも自分が「薬をやめられない体になってしまった」という認識は、服薬後2、3年目には持ち始めていた。だから、遅きに失したとはいえ、向精神薬の本質を知った時、それを疑うことは全くなかった。ただただ、自分の無知と、欺されていたことが悔しくてならなかった。
だから、要は精神医療ムラのウソを暴き、正しい情報を被害者をはじめとした多くの人々に訴えれば、やがて真実が勝つのだと、少々楽観的に考えすぎていたようだ。実際は、精神医療ムラの洗脳工作は圧倒的な力をもって、一般人だけでなく、当の被害者自身の判断力をも奪いつくしているのだ。
それは原子力ムラのケースと全く同じだ。当事者=立地自治体・住民には交付金や寄附金という金の力で、一般国民には継続的な原子力安全神話キャンペーンによって洗脳しつくした。それは3・11によって崩壊したかに見えたが、立地自治体・住民には「原発がなくなれば地元経済が立ちゆかない。生活できなくなる」という強迫観念を植え込むことによって、そして一般国民に対しては原子力安全神話に代わる放射能安心神話をまき散らすことによって、みごと復活を果たした。
本来なら原発の恐ろしさと放射能の怖さを身をもって体験したはずの福島県民の中にも、真っ先に苦渋の決断をしてふるさとを捨て遠くへ避難した人、放射能の恐怖や不安とたたかいながらもふるさとに残る選択をした人々がいる一方で、原発や放射能の現実・真実から目を背けて何ごともなかったかのようにそこで暮らす道を選択した人々もいる。ましてや福島から遠く離れた他の国民は、大多数がフクシマは過去のことという認識で、まんまと放射能安心神話の罠にはまっている。ここまでくれば、原発再稼働は時間の問題だ。
やはり「そのうち痛い目に遭えば気づくだろう」と突き放すしかないのだろうか? 元来おせっかいな私は、どうしてもそういう態度がとれない。危険ですよ! 危ないですよ! 欺されちゃダメですよ! と呼びかけたくなるのだ。しかし、そうした私の訴えは、雑踏で「ハルマゲドンが近づいています。信じる者だけが救われるのです!」と呼びかけているカルト信者のように、一般国民の目には映るのか? あるいはそう見える人々こそが、××ムラにマインドコントロールされて、真実から目を背けているだけなのか?
今こそ理性と感性を研ぎ澄ませ、現実から目を逸らすことなく真実と向き合い、自身を信じて行動していかなければならない。



『うつを治したければ医者を疑え!』という本 [Anti-psychotropic drugs]

私の『のむな、危険!-抗うつ薬・睡眠薬・安定剤・向精神薬の罠』が出てからちょうどひと月後に、同様のテーマを扱った『うつを治したければ医者を疑え!』(伊藤隼也と特別取材班著、小学館)という本が出たので読んでみた。(もっとも内容は「SAPIO」を中心とした雑誌に2011年から2014年に掲載された記事を再構成したもの。そのせいで、何ヵ所か重複が見られるのが気になった。)
うつ.jpgタイトルからうつをテーマにした本のように見えるが、実際はうつ病以外にも、子どもへの向精神薬の投与のほか、精神医療とは直接関係のない製薬業界と医師との癒着問題にも何章かが割かれており、多少羊頭狗肉の感が否めなくもない。しかし、子どもへの向精神薬の投与問題についてはかなり丹念な取材がなされており、一読に値する。
一方、本書を通読して感じるある種の物足りなさは、つまるところ日本の精神医療における多剤大量処方を批判しつつ、向精神薬そのものへの掘り下げた分析なり考察がなく、著者がどこまで精神医療における向精神薬の使用を容認しているのか曖昧だという点にいきつく。
私は取材と勉強を重ねた結果、統合失調症患者も含めて、向精神薬の使用は対症療法として緊急一時的・頓服的使用の有効性(例えば統合失調症患者の急性期症状への抗精神病薬の使用、パニック症状を起こした患者への抗不安薬の使用等)は認めつつも、そうしたケースも含め、心の病の根本原因は発症に先立つ精神的な体験にあり、脳内の変化はあくまでその結果に過ぎないという立場から、心理療法や漢方療法、栄養療法等がより根本的な治療法として有効であり、上述したような、現状において容認しうる薬物療法も、それらの療法によって代替可能ではないかという考えも合わせ持っている。
その辺の著者の立ち位置が今ひとつ本書では曖昧なため、登場する精神科医の発言も、皆一様に多剤大量処方には批判的でありながらも、向精神薬そのものへの評価となると不明瞭になる。そのいちばんいい例は、最後につけ加えられている井原裕医師との対談だ。ここでは井原医師は患者に向精神薬をできる限り使わない医療を実践している正義の医師として登場しているのだが、私の本では彼はある著書の中で「医師=善意の人、患者=現実逃避の依存症者」というとんでもない図式を描き出すエセ良心的精神科医として登場する。果たしてどちらが彼の本当の姿なのか? 少なくとも、私が読んだ彼の論文は、(多剤大量処方でもない)ベンゾジアゼピンの常用量依存にさせられ、離脱症状のために断薬もままならなかった薬害被害者の私の立場からすれば、到底許される代物ではなかった。
とまれ本書は、医療ジャーナリストとして丹念な取材と豊富なデータに基づいて、現在の日本の精神医療の実態を浮かび上がらせており、「これ以上、新たな被害者を生み出してはならない」、「自分がしたつらい経験を他人に味わわせたくない」という思いも、私の思い、そして私に本を書かせた動機に通じるものであり、その思いの実現に通じるために1人でも多くの被害者や被害者予備軍の手に届いて欲しい1冊ではある。



Dr.倫太郎と日本の精神医療の現実 [Anti-psychotropic drugs]

15日から始まった日本テレビ系列の連続ドラマ「Dr.倫太郎」。堺雅人演じる精神科医が主人公で、「ドクターX」と「半沢直樹」を足して2で割ったようなタイトルにきわもの臭さを覚えつつ初回を見たが、あに図らんや、脚本の中園ミホはそうとう精神医学について勉強した跡がうかがえる。
大学病院の勤務医・日野倫太郎はライバルの宮川教授から「精神分析とやらは最新の生物学的精神医学とは逆行している」と言われる精神分析学(自己心理学)派の精神科医で、患者1人に50分も時間を割く医師。「すべての精神疾患は病ではありません。心の個性だと僕は思っています」と学生に教える。そして、宮川教授に、「患者さんの話も聞かず画像分析だけで薬を投与する宮川教授のお得意とする生物学的精神医学では救えない患者さんはたくさんいます」と言って憚らない。(その場面では、必死に症状を訴える患者を見向きもせず、画像を見ながら「薬出しときますね。次の方」と言う宮川の象徴的な診察シーンが挿入される。)

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もちろん上述したように、このドラマは視聴率を狙ったエンタメだが、脚本を書く過程で日本の精神医療の現状をつぶさに観察したであろう中園ミホは、宮川教授に象徴される「生物学的精神医学」=薬漬け精神医療の恐るべき実態を目撃したはずだ。もちろんそれを真正面から批判してはエンタメドラマは成り立たないので、その対極にある象徴=精神科医の理想として日野倫太郎という人物を造形したのだろう。日野倫太郎を主人公として肯定的に描くこと自体が、今の日本の精神医療への痛烈な批判になるからだ。
次回以降、物語はどう展開していくのか、蒼井優扮する芸者・夢乃とのラブストーリーを軸に展開していくことだけは分かっているが、肝心の精神医療がどう扱われるのか、予断は許さない。
日本においては日野倫太郎のような精神科医は、開業医としては存在し得ない。何故なら、今の日本の医療システムでは、1人の患者に50分も時間を割いていたら、全く儲からない診療報酬体系になっているからだ。そうした経営上の問題を心配する必要のない勤務医の中には、実際、ごく希に倫太郎のような精神科医が存在するが、現実は倫太郎のようにベストセラー本を出したりテレビに出演したりして、社会から脚光を浴びるようなことはなく、逆に、病院から煙たがられ、邪魔者扱いされ、クビにされるのが落ちだ。(倫太郎自身、「会議などに出る暇があれば1人でも多くの患者さんを診たい」というのなら、本を書いたりテレビに出たりする暇はないはずなのだが…。)ベストセラーを書いたり、テレビでコメンテーターをやっているような「精神科医」は、実際に医療経験のほとんどない名ばかり精神科医か、生物学的精神医学とうまく折り合いをつけているタレント精神科医だ。
この理想と現実のギャップを無理に埋めようとすると、ストーリーがとんでもない方向にいってしまう危惧もある。むしろ、倫太郎に狂った精神医療の現実と格闘させ、そのことによって、さらに日本の精神医療の隠された暗部を余すところなくあぶり出してほしいと願う。
向精神薬被害者としては、このドラマが薬漬け医療の犠牲となっている320万人の「精神疾患患者」に、自分の受けている医療のデタラメさに気づいてくれるだけでなく、精神医療や向精神薬の問題に無関心な一般視聴者に、日本の精神医療の実情を知り、おかしいと思ってくれる契機となってほしいと、切に願う。

※付言すれば、精神医学のみならず、医学全面否定にまでいきついた内海聡医師のような立場からすれば、Dr.倫太郎のような医師も否定すべき対象になるのかもしれないが、心弱きヒツジのような存在である私のような人間にとっては、倫太郎のような医師は必要だと思う。精神医学も薬物療法を唯一絶対視する生物学的精神医学が間違っているのであって、精神分析学的精神医学や精神療法は有効だと私は思う。ただし、医師を「先生」と崇め、すべてを医師に委ねる患者の立場は変革しなければならない(精神医療に限らず)。医療の主体は患者であり、患者は医師と上下の関係ではなく対等な関係であるべきであり、そのためには患者自身が自身を知り、そのための情報を得て勉強することを通して主体性を確立しなければならない。そういう意味で患者も自己に対して厳しくなければならないが、医師には患者の立場に立った真の意味の「優しさ」が求められると思う。


厚生労働省は精神安定剤や睡眠薬等(=ベンゾジアゼピン系薬剤)の1ヶ月以上の継続投与を禁止する行政措置を!-終了しました [Anti-psychotropic drugs]

昨年4月にChange.orgで開始したネット署名「厚生労働省は精神安定剤や睡眠薬等(=ベンゾジアゼピン系薬剤)の1ヶ月以上の継続投与を禁止する行政措置を!」3月末をもって終了しました。当初1万名を目標に開始しましたが、途中で1千名に変更したものの、最終的に315名のご署名をいただき終了することになりました。ご署名いただいた方に深く感謝するとともに、目標数を達成できなかったことをお詫びいたします。皆様からいただいた署名は、その都度厚労大臣宛にメールが送付されただけでなく、終了後、プリントアウトして厚労大臣宛に提出しました。当初は目標達成時に厚労省を訪れ直接提出し、記者会見まで考えていましたが、署名数に鑑み郵送での提出とさせていただきました。
この署名活動を通して、まだまだ一般の方の向精神薬薬害への理解と認識、関心が広がっていないことを改めて認識させられました。特に、従来から薬害問題を積極的に取り上げてきた進歩的な政党などの関心のなさも浮き彫りになりました。署名開始後、上京した折に、(ムダな誤解を生まないように敢えて党名を公表しますが)社会民主党に協力を仰ごうと電話をしたところ、こちらの説明(上京中なので一両日中に是非直接話を聞いてほしいこと、向精神薬、特にベンゾジアゼピンの問題点、被害の深刻さ等々)も上の空、「国会会期中で集団的自衛権問題が大詰めなので…」と、けんもほろろな対応でした。政界に顔が利けば、党派を超えて、こうした問題に関心を持ってもらえそうな議員への直接オルグをすればいいのでしょうが、私にそのような政治力はなく、結局、「政治工作」は諦めざるを得ませんでした。
しかし、署名開始前に、ベンゾの危険性を何とか訴えようとして、従来から薬害問題に取り組んでいる薬害オンブズパースン会議に電話をして、事務局の方に長々と説明をしたところ、「会議に諮る」との回答を得、あまり期待をせずにいたところ、今年初めホームページ上に調査・研究対象にベンゾジアゼピン系向精神薬が取り上げられ、具体的行動として「現在、情報収集、実状把握、学習等を行い、行動指針に基づいて、各販売企業および厚生労働省に対する要望書の作成に取り組んでいる。離脱、減薬治療を理解し、実施してくれる医師や医療機関を募り、その実践と要望の実現に向けて協力を得るよう、働きかけを開始している。」と明記されました。

私自身は3.11後、原子力ムラの洗脳から解き放たれたように、内海聡著『精神科は今日も、やりたい放題』を通して、それまでの精神医療ムラによる洗脳から目を覚ますことができたのですが、世の中の向精神薬と日常的に関係のない人々にとっては、そのような私たちの存在は、3.11以前に広瀬隆さんのような反原発活動家が原子力ムラからカルト呼ばわりされ、一般の人々もなんとなくそれに同調していた状況と似て、反向精神薬を叫ぶとカルト視されるような風潮を感じてしまうのです。しかもそれは、3.11によって目覚めた自覚した市民層でさえそうなのです。あるいはそうでなくとも、せいぜい善意の無関心です。
この状況を変えたいと微力ながら書いた『のむな、危険!-抗うつ薬・睡眠薬・安定剤・抗精神病薬の罠』(新評論、3月刊)も、正直、出だしがイマイチの状況です。今月1日に東京新聞に広告が載ったところ、問い合わせが集中したとのことなので、こうした情報を真に必要としている人々-向精神薬被害者に、なかなか情報が届いていないということでしょう。
まずは、320万の「精神疾患患者」、その大多数を占めるであろう薬害被害者の方々に、精神医療ムラの洗脳から解き放たれ、自身の被害を自覚してもらうべく、本書が届くことを切に願っています。


何でも病気にしてしまう『DSM―5』 [Anti-psychotropic drugs]

昨年日本語版が出版された『DSM―5』(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版、アメリカ精神医学会、2013年)は、相変わらず心のちょっとした変化を「脳の病気」として精神科へ誘導し、患者を薬漬けにしようとする意図に貫かれている。
例えば、月経前不快気分障害
「月経前不快気分障害:いちじるしい情緒不安定、イライラ感、抑うつ気分などの症状が月経開始に先立つ最後の週に出現し、月経開始後二、三日以内に改善しはじめ、月経後には見られなくなることで特徴づけられる」
恐らく初潮後閉経までの女性の大部分が、多かれ少なかれこれに当てはまるのではないだろうか。男の私にはよく分からないが、私の観察眼では、身の回りの女性の多くは、だいたい「月経前不快気分障害」の兆候が見られる。
そのうち、生理のうつなどという、うつ病啓発キャンペーンが始まるのではないかと心配になる。

“生理は、どこがつらくなるでしょう? 下腹部です。心です。よく知られたことですが、生理には、お腹の痛みだけでなく、イライラ、情緒不安、憂うつなど心の症状も伴います。 でも、悩まないで。それはうつ病の兆候でもあり、不快な気分も治療ができます。まずはWEBで、お近くの精神医・心療内科を探してください。 生理はつらいものです。でも、心の薬がそれを和らげてくれます”

内海聡医師は『精神科は今日も、やりたい放題』の中で「やけ食いと何が違うの? 摂食障害」と書いているが、とうとう『DSM―5』ではむちゃ食い障害なんていう障害まで登場してしまった!「Binge-Eating Disorder」の訳で、日本精神神経学会の「DSM―5病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」(https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/dsm-5/files/dsm-5_guideline.pdf)では「過食症障害」と訳しているが、『臨床家のためのDSM―5 虎の巻』(森則夫・杉山登志郎・岩田泰秀著、日本評論社)では「むちゃ食い障害」となっている。「Binge-Eating」は一般的には「むちゃ食い」なので、普通の感覚としては「むちゃ食い障害」となるだろう。
なんだか、頭がおかしくなってきた。たしかに、精神医学、精神医療の世界というのは普通じゃない!




『のむな、危険!-抗うつ薬・睡眠薬・安定剤・抗精神病薬の罠』刊行! [Anti-psychotropic drugs]

2年前の向精神薬断薬の失敗以来、私はこの国の薬漬け精神医療の現状、何より私のように何も知らないまま精神科や心療内科の餌食にされ、一度しかない人生を薬物依存=薬物中毒のために台なしにされかねない人々を救い、これ以上犠牲者を出さないため、自分に何ができるのか考え、自分の体験をムダにしないために必死に勉強して、私たち向精神薬被害者の叫びを伝え、向精神薬=麻薬の危険性を知らせるべく、ここに1冊の本を皆さんにお届けすることになりました。
4年前の東京電力福島第一原子力発電所の爆発による放射能被害が起こった時も、私はそれ以前の自分の無知を恥じ、必死に本を読み、原発や放射能について勉強しました。そして、国や学者、マスコミがいかにウソをついてきたかを知り、原発をこの国から、そして世界からなくすために自分のできる方法でたたかってきました。
原子力ムラと同じ構造の(精神)医療ムラとのたたかいも、私にとって同様のものとしてありました。いえ、当時埼玉県に住んでいた私にとってフクシマは福島県民ほどには原発や放射能が切実な問題ではなかったのに比べて、向精神薬被害はまさにわが身に直接関わる問題でした。その後試みた断薬に失敗したものの、私はこの問題から逃れることができないことを悟りました。
精神医療ムラ解体のたたかいは、原子力ムラとのそれとは戦術的には全く異なりますが、たたかいの主体であり、原動力であるのは、市民=被害者であり、その市民=被害者の自覚と理論武装であることは同じです。そういった意味で、このふたつはニッポンムラという怪物との自覚した市民の自らの解放をかちとるためのたたかいです。
精神科、心療内科(メンタルクリニック)に通院してくすりを常用している方、あるいは内科や婦人科等で睡眠導入剤・睡眠薬を処方されている方、外科・整形外科等で慢性の痛みの緩和薬と称して処方されるくすりを常用されている方……それらはみな向精神薬で、一時的に症状を緩和することはあっても、長期間服用すると依存症=中毒になったり、思わぬ重篤な副作用をもたらしたり、やめようとすると強烈な離脱症状=禁断症状が襲います。ぜひ本書を読んでください!これからメンタルクリニックへ行こうとしている方、その前に、ぜひ本書を読んでください!

偶然ですが、私は昨日、ある青年に会いました。彼はパニック障害でメンタルクリニックへ通い、2種類の向精神薬を処方されていると語りました。私はどのくらい通院しているのかと問いました。彼は「3ヵ月ほど」と答えました。私は胸をなで下ろしながら、「今ならまだやめられる」と言い、持ち合わせていた本を1冊あげました。私の本は、まさに彼のような人を向精神薬の罠から救うために書かれたのです。私は、「これでひとり救うことができた」と、この本を出した意義を噛みしめることができました。




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